羨ましがっているのはお互い様


「え……そうだったの…?」

「うん……ごめん、今まで言うタイミングなくて」

「ううん、なまえと沖矢さんお似合いだと思うよ」


蘭ちゃんは笑顔でそう言ってくれた
私も嬉しくて、笑い返す


「蘭ちゃん、そういえば新一とどうなの?最近」

「連絡とってないの……その……」

「うん、わかった
 新一にも私から一言言っておくよ
 蘭ちゃんに連絡しないなんて…もう」


できないのは分かっているけど、たまにはしてあげてほしいと思ってしまう
昔からずっと2人を見てきて、組織関連で2人の仲が崩れてしまうんじゃないかと不安なのだ
私は、2人に幸せになってもらいたい


「いいの…!
 新一、事件で忙しいって言ってたし」


好きな人と会えないことがどれほどに苦しいことか、私は知っている
涙が枯れるほどに泣いて、でもどうにもできない


「蘭ちゃんは、好きな人がちゃんと離れていても確実にいるんだよ
 だから、きっと遠慮なんかしてたらもったいないよ」

「え?なまえ……」

「最近恋愛小説読んでたら、そういう話あって、私は好きな人といられるから幸せだなって思って…!」


なんとか言い訳をすると、蘭ちゃんは信じてくれたようで、そうだねと笑ってくれた


「なまえは結構新一と連絡とってるよね…
 昔から、新一はなまえのこと信頼してて…なんか相棒みたいな」

「……そうかなあ
 私2人より年上だったし…それもあると思うよ」

「それでも、少しだけ羨ましかった」


私は新一に守られている蘭ちゃんが羨ましかった
昔の私は、きっと新一に恋をしていた

自覚する前に、終わってしまった恋
初恋は叶わないものだ

でも、きっと叶う人だっている


「……私だって蘭ちゃんが羨ましいって思うとこ、たくさんあったよ」


強くて、可愛くて、スタイル良くて、性格良くて、もう完璧なんじゃないだろうか
昔の私だって、こんな子が恋のライバルだなんて知ったらすぐ白旗をあげたに違いない


「変だね、私たちお互いを羨ましがってたんだね」

「ふふ、そうだね」


お待たせしましたと安室さんが注文したものを持ってきた
安室さんはじっと私を見つめてからそのまま厨房の方へ戻ってしまった

安室さん、どこかで見たように気がする
きっと気のせいかな