ちょっとした変化B


「え?どっかに止まるの?」


船がスピードを落とし始めたので、私は新一に聞いた
どうやら、一角岩に寄るらしい

一角岩に着くと、子どもたちが写真を撮るというので、離れてみていると歩美ちゃんたちに引っ張られて、真ん中に座らされてしまった

私、釣りで汗だくなんだけど……ちょっとひどい顔してる


「撮りますよ」


その時、沖矢さんが何かに気づいたようで、哀ちゃんに近づいてきた
すると、哀ちゃんの後ろの岩には魚の名前が彫られていた


「……誰かいるのかな」


ダイバー用のやつも岩と岩の間に挟まっていたし、一応見て回ろうという話になり、私たちは見回り始めた


「なまえさん、体調は戻りましたか?」

「あ、え?……はい」


沖矢さんは突然話しかけてくるので本当に心臓に悪い


「もしかして、僕の事苦手に感じていますか?」

「そ、そんなこと…!」


苦手とかじゃない
ただ、妙に意識してしまうというか


「それなら、良かった
 あなたに嫌われたら、どうにかなってしまいそうですからね」


沖矢さんは最近妙に心臓に悪い発言をするようになった
いつからだったか分からないが、そういうことが増えた


「お、沖矢さんイケメンだし…私みたいなのに嫌われても全然気にしないと思ってました…
 誰にでも優しいから……」


沖矢さんの顔からいつも余裕な笑みが消えた
私は、まずいと思った
きっと沖矢さんの地雷を踏んでしまった


「誰にでも優しいと思ったら、大間違いだ」

「え?」


沖矢さんは私を置いて、子どもたちの後を追った
沖矢さんじゃない誰かが、私に話しかけてきたような感じだった
口調はまるで…………そんなはずはない
私は首振って、その可能性をかき消した

子どもたちが騒ぎだしたので、向かうとそこには女の人が岩に寄りかかった状態で死んでいた