守られるだけのシンデレラ


「あの、赤井さん
いきなりどうしたんですか?」

「証人保護プログラム断ったのか」

「はい、決めてたことですから」

「君の両親にも頼まれていたことだったんがな…」

「両親をお存じなんですか?」


私は思わず聞いてしまった
組織の人間にも聞きたくても、聞く勇気がなかった
私の知らない両親を知ることが怖かったのだ


「…俺が組織に潜入していた時にずいぶん世話になった」


「そうですか
 母は優しい人でした、私はそんな母が大好きで、でも少し悲しかった
 人間には白い自分と黒い自分がいると母はよく言っていました
 母は私には白い自分しか見せてくれなかったんです」


「そうだな…キティはそういうところがあった
 君の母親のコードネームはキティ
 何故組織にいるのかと理解できないくらい純粋で心優しい人だった」

「キティ……」

「君は組織内ではシンデレラと呼ばれていた
 一種のコードネームのようなものだ」


私にはコードネームがある
それは組織が私が約束を破ったらすぐにでも組織のメンバーになる準備が整っているということだ


「そんな顔をするな、俺が守ってやる」

「……赤井さんは不思議な人ですね
 赤井さんに言われると不思議と安心してしまうんです」


あの人が死んでから、守ってやるとかそんな言葉を信じられなくなっていた
でも、何故か赤井さんの言葉は私の中にゆっくりと融けていく
出会ってそんなに経っていないのに彼といると安心する
それと同時に少しだけ心臓の鼓動が早くなる

人はこの感情を何というのだろうか


「……そうか」

「死なないでくださいね」


もう誰も失いたくない
そんな恐怖が私の身体を包み込んだ

赤井さんは何も答えなかった