彼は昔からそうだった


「お姉さん、キーホルダー落としたよ!多分、ひもが切れたんだと思う」


新一によく似たメガネの男の子が人懐っこい笑顔を浮かべて、私にウサギのマスコットのついたキーホルダーを渡してくれた
確かに私のだと確認して、ありがとうとお礼を言った


「君、名前は?」

「江戸川コナンだよ!」


すごいキラキラネームだなと思う前に、名前を聞いてやっぱり違うかと少し落ち込んだ
そうだよね、新一なわけがない
身体が縮むなんてそんな漫画のようなことが起きるわけがないと今までの自分の勘違いが少し恥ずかしくなった


「ボク探偵なんだ!」

「探偵……?」


新一も探偵がどうのこうのとか言っていた気がする
お父さんが推理小説家だったし


「なまえ」


コナン君が私の名前を読んだ瞬間に空気が変わった
コナン君は、小学生とは思えないほどの大人びた表情をしていた
眼鏡をはずしたコナン君の姿は幼い時の新一そのものだった


「し、新一……?」


コナン君はシィーと唇に指をあてて、私に笑った


「お姉さん、できたらどっかで話さない?
 聞きたい事があるんだけど」

「私の家はすぐそこだから、そこでいい?」


コナン君がコクンと頷いたのを確認して、私たちは家へと歩き出した







「新一であってるの?」


コナン君と向かいあわせに座る
小学生と短大生、少し不思議な組み合わせなのに気持ち悪いくらいに違和感がなかった
それはこの少年が新一によく似ているからだろうか


「ああ…
 ある組織に毒薬の飲まされて、体が縮んだんだ」

「ある組織……?」

「黒服を着た奴らだ」


私は背筋が凍るのを感じた
新一があの人たちと関わるなんて、私が原因かもしれない
そんな思いがぐるぐると頭の中を回った


「……それで、灰原からお前が組織に関わる人間だって聞いた
 何か情報があったら教えてほしいんだ」

「新一、私が教えられることは何もないの」

「!」

「その灰原って、この間私をことを見てた茶髪の子?
 その子は宮野志保ちゃんだよね…
 志保ちゃんから聞いたと思うけど、私はある条件で組織から逃れることができた
 それは、組織の情報を知らないことなんだよ
 知ったら、私は組織のメンバーになることになる
 そういう約束なの
 だから、その組織は何なのかとかボスとか全然知らないの」

「……そうか」


残念そうな顔をした新一に謝ると「お前が謝る必要ねぇよ」と返された
待ちに待った再会なのに、私は怖くて仕方がなかった

そんな私の異変に気づいたようで、新一は私の目をしっかり見て、「なまえ」と優しい声色で呼んだ


「安心しろよ、俺は死なない
 お前を絶対に自由にしてやるから」


昔からそうだった
新一は、他の人なら騙せる嘘の笑顔もすぐ見破ってしまう


「新一は変わらないね」

「お前もな」


昔から私は、新一のこういうところが好きだった
でもね、新一
私の周りでいなくなる人はいつもそうやって、いうんだよ


“俺は死なない、お前を守ってやる”って