True love stories never have endings
(本物の愛の物語には、結末なんてない。)


降谷と安室とめんどくさい恋をする

あなたを知りたいという私は我儘?



「お、沖矢さん?」


「本名は赤井秀一という
 事情があって、今は沖矢昴として過ごしている」


「赤井さんは今とても危険な状態なんだ
 安室さんが、赤井さんを悪い奴らに明け渡そうとしている
 それで、安室さんに赤井さんと沖矢さんが別人だと思わせたくて、なまえさんの力を貸してほしい」


私は、零の仕事を詳しく知らない
警察だといっても、今は潜入捜査をしている
潜入捜査先では、信頼されるためになんでもするのかもしれない

人殺しも例外ではない

零がわざわざ私を遠ざけるということはそういった仕事もある

どうして、私は今までそんな零に気づけなかったんだろう
私と別れた約9年間できっと、辛い事がたくさんあった
それで完璧に作り上げられた安室透という人間


「私、赤井さんはよくわからないけど、沖矢さんに頼まれたらやらないわけにはいきません
 協力させてください」


コナンくんは安堵した表情を浮かべた

零の敵になる
それを分かった上で私は引き受けた
私は零の敵として、私の知らない零を知りたい

あなたを知りたいと思う私は我儘なのだろうか


「断られると思っていたよ」


「私、沖矢さんのこと友人だと思ってるんですよ
 友人が困っていたら、助けたいです」


赤井さんは沖矢さんとは違ったタイプの人だった
それでも、全くの別人だと思うのは顔だけで雰囲気は似ていた
沖矢さんは落ち着いていて穏やかで紳士って感じの人
赤井さんは沖矢さんと同じく落ち着いているものの、目の奥ではメラメラと火が揺らめいているような人
それでも、なぜか落ち着く


「もし、沖矢さんがピンチになったら、私の名前出してください
 “彼”、すぐ頭にの血が上るから、少しは錯乱できると思いますよ」


「錯乱どころか、効果抜群なんじゃない?」


コナンくんも赤井さんも苦笑いをした
私は頬が緩んでしまって、ずいぶんな間抜け顔だったと思う
赤井さんはそんな私を興味深そうに見ていた


「君は本当に“彼”が好きなんだな」


「そうですね、昔からずっと…」


「一つ言っておく
 彼は俺に対して殺意を抱いている
 君が俺に力を貸すということは彼を裏切るということになるんだぞ」


「沖矢さんは私の知らない彼を知っているんですね、嫉妬しちゃいます
 彼は私のためなら平気で突き放したり、嘘をついて騙したりを平気でする人間だと言っていました
 それなら、私だって彼を知るために彼を裏切ることぐらいしてもいいって思ってるんです」


そんな私を見て、赤井さんは驚いていたが、また表情を戻して、私に握手を求めた
私は、その手をとって優しく握りしめた


「心配しないでください
 私、彼を裏切ってでも彼を知るって決めたんです
 赤井さんに言われたから、頼まれたからじゃないんです」


私は初めて、沖矢さんではなく、赤井さんと呼んだ

私と赤井さんは笑い合った
赤井さんとは初対面なのにこんなに話しやすいのはやっぱり沖矢さんだからなのだろうか


零、私はあなたの教えてくれないあなたを知りたい
そのためなら、敵にだってなれる酷い女なんだよ