手合わせとヤキモチ

「あれ、コナンくんたちと透だ」


蘭ちゃんに空手を指導していると、誰かが入ってくる音がして、見ると零にコナンくん、子どもたちだった
そういえば、零に場所とか伝えた気がするなあ

蘭ちゃんに休憩にしようと声をかけてから、透に駆け寄る
あの大人っぽい哀ちゃん?って子は来なかったんだな
まあ、零と会うのはちょっと危ないか


「安室さんもすっごく強いんだよ
 この間ね、私たちを悪い人たちから助けてくれたの!」


歩美ちゃんの言葉を聞いて、ついこないだのキュラソーの一件を思い出す
あの時は私の制止も聞かず、秀一さんに零が飛びついていって……
互角かどうかはわからなかったけど、個人的には赤井さんの方が優勢だったかも
あんな子どもっぽい零が見られることは珍しいから、そんなことをしている場合じゃないというべきだったあのギリギリの状況を今でも思い出しては、笑ってしまう


「なまえ、何がおかしいんだ?」


「え?なんでもないよ」


にへらっと笑って返す
それが零にはお気に召さなかったようで、不機嫌そうにこっちを見た


「なまえ、じゃあ俺とここで一対一で勝負をしよう」


「え?」


「負けたら買ったの方の言うことを聞く……いいな?」


いいな?って…それ私に拒否権ないやつだよね?
零は一度言い出すと簡単に変えないことを私は知っている


「わかったよ……」


零と手合わせなんて、出会った時以来じゃないかな
なんだかんだで、そういう機会なかったし
風見くんとはよく勝負してたけど


零が真っ直ぐ私に向かってくる
真っ直ぐなパンチが飛んできたが、ギリギリのところで避ける

零と私の手合わせはボクシングと空手だったり、めちゃくちゃなのだ
お互い、色々なものに手を出してきてしまったせいだし、ルールを決めないのがいけないと思う

でも、これが一番私たちが勝負できる方法だ


「なまえ、昔より避けられるようになったな」


「ずいぶん、余裕だね!」


零のパンチがこっちに来たのと同時に私はそれを下に避ける
そして、すぐに立ち上がり、キックをお見舞いしてやった
カウンターが私の特技だということを忘れたのか


そんな考えも甘かったようで、零には見えていた
私のキックを華麗に避けた零は私の足に足を絡めた
私はそれにすぐに反応できず、ゆっくり後ろに倒れる


「俺の勝ちだな」


「んーんー
 今度からもうルール決めよう
 色々混ざりすぎて訳わからない」


「実戦になったら、どんな手も使わなきゃいけないなくなるだろう…」


「えー」


「さあ、教えてもらおうか」


零の顔がジリジリと近づいてくるので、分かったからストップ!と言う
そういうと、零の顔が少しだけ離れる


「秀一さんとこの前、零がバトってた時のことを思い出して笑ってたの…」


他の人たちには聞こえないような小さな声で言うと、零はまた怖い顔をした
次は何が気に食わなかったんだろうか…


「赤井のこと、名前で呼んでるのか?」


私はしまった!と自分の過ちに気づいた


「その“秀一さん”とは仲が良いのか?」


「ひい!」


零は完全にヤバイ目をしていた
それに私は、顔を青ざめる
どんだけ、秀一さんが地雷なの!?
ああ、私死ぬのね!?


「……少し前に会って、それで少し話をしただけ…」


秀一さんが沖矢さんってこと言えない
許してね、零

スコッチの件を知ってしまった私は沖矢さんの正体を教える訳にはいかない
きっと教えたら零は……


「透は無理しすぎだよ、あの時もそうだし
 秀一さんのこと敵視してるのはいいけど、あの時のことは反省して」


「お前も無理するだろう
 あの時も来るなってあれだけ…」


「私だって、警察だから危険は覚悟してる!
 零は過保護すぎ!」


「お前な…」







「みんな迎えに来ましたよ」


「あ、沖矢さんだー」


「おや、なまえさんと安室さんが手合わせをしているんですか?」


「そうだよ
 後で沖矢さん、なまえさんに色々言われると思うよ」


コナンくんがそういうと、沖矢さんはにこやかに笑った
沖矢さんには何でもお見通しなんだろうなとコナンは思った