気づいた時にはもう遅い

※大学時代捏造


俺は大学生の時にある女に恋をした
日本人で小悪魔のような笑顔を浮かべたその女は人気者だった


「秀一くんだっけ?
 私、なまえ
 もしかして、秀一くんって日本人?」


「日本に昔、住んでいたことがあった」


「そうなんだ!
 私、そういう人に今まで出会えてなかったからうれしい
 仲よくしよう!」


「ああ…」


「秀一くんってかっこいいよね
 私、実はずっと前からお話してみたかったんだ」


それから、彼女と出かけたり、よく話したりするようになった
そんなある日、彼女が友人との会話で「長い髪の人って結構好き」と言っているのを聞いてしまった
我ながら、単純だがその日から髪を伸ばすようになった
しばらくすると、彼女が友人との会話で「私、黒い服似合う人ってかっこいいなって思う」と言っているのを聞いてしまった
本当に単純だが、それから黒い服を好んできてしまうようになった

不思議と嫌ではなかった
彼女の言葉一つ一つに翻弄される自分はまるで彼女の色に染まっていくようなそんな気がしたからだ


「秀一くん、本当にますますかっこよくなったよね」


「そうか?」


卒業が近づいてくる頃には俺の髪はかなり伸びていた


「私は卒業したら日本に帰るよ
 秀一くんは?」


「俺はここに残る」


「そっか……寂しくなるね
 寂しいな、会えなくなるの」


「そういうことをいうな」


彼女は儚げに笑う
今まで見てきた中で一番綺麗な微笑みだった


「期待してくれたの?
 私はしてたよ
 私の言葉を聞いて、髪を伸ばしてくれたこと、黒い服を着ることが多くなったこと
 私ね、わざと秀一くんに聞こえるように言ったんだよ」


「なまえ…」


「私、性格悪いかな?
 秀一くんが私の言葉一つ一つに影響されているのが嬉しくて……」


「…お前は俺のことが好きなのか?」


「そうだよ、私は秀一くんが好き」


俺は無意識になまえにキスをしていた
体が勝手に動くというのはこういうことを言うんだなと思った


「秀一くん…」


「本当に困ったやつだ
 必ず迎えに行く
 だから、日本で待っていてくれ」


「じゃあそれまでに私も秀一くんの好みの女になるね」


「もうなってる」