疑惑と反対に

「え?安室さんの彼女?」


「うん、園子が昨日見たんだって
 それが私たちと同じくらいか、中学生ぐらいにも見えたらしいの」


安室さんの彼女?
聞いたことも見たこともないな
もしかして、潜入前からの彼女?

それにしても蘭たちと同じくらいならともかく、中学生だったら相当な年の差だな…


「安室さん、年下好きなのかなって…」


年下どころの話じゃなくて、下手したらロリコン扱いされるんじゃ…


「あ、そういえばコナンくんどこかに出かけるって言ってなかった?」


「そうだった!出かけてくるね!」


「いってらっしゃい!」


今日は母さんが来るから家に帰らなきゃいけないんだった
家に急ぐと、もう母さんの車が停まっていて、着いているのは確実だった


「あら、し…コナンくん遅かったわね〜」


また新ちゃんって呼ぼうとしたなと母さんを睨むと母さんは口パクで「ごめんね」と言って、手を合わせていた
家に入ると、沖矢さんがソファーに座って待っていた
俺に気づくと立ち上がって、近づいてきた


「赤井さん、安室さんの彼女の話って聞いたことある?
 組織入る前からいたとか…」


「何度か妹みたいな少女と歩いているのは見たことがある」


「妹なのかな」


「どうかしたのか?」


不思議そうに聞く、赤井さんに「ううんなんでもないよ」というと、「そうか」と返ってきた
赤井さんは、必要以上には踏み込んでこない
それにホッとしていると母さんが鼻歌を歌いながら、やってきた









探偵事務所への道を少し急ぎめに歩く
夕食に間に合うか間に合わないかギリギリの時間だ


「あの、そこの君!」


「え?」


振り返るとスーツを着た女性がいた
スーツを着ているなら社会人の可能性が高い
なぜこういう言い方をしたのかというと、顔立ちがかなり幼かったからだ
そして、この顔立ちのせいか、驚くほどスーツが似合っていない
初対面の人に対してこういうことを思うのは失礼かもしれないが、きっと俺以外が見ても同じことを思う


「なあに、お姉さん」


「ハンカチ落としてたよ〜」


「ありがとう!」


「いいえ〜
 もう暗いから気を付けて帰るんだよ〜」


間延びのした優しい声色だった
その時、聞き覚えのある声が聞こえた


「なまえにコナンくん?」


「あ、透」


「え?もしかして、安室さんの妹さん?」


顔はあまり似ていなかったが、その可能性もあるなとそう聞いてみると、安室さんは「違うよ」と優しく微笑んだ


「潜入前から付き合ってる彼女だよ
 こう見えても僕と同じ年だよ」


「そうなんだ」


確かに園子が勘違いするのもわかる
きっと俺もスーツを着ていなかったら分からなかった


「こう見えてもって何〜?」


「お前は若く見られるってことだ」


「透だって、童顔のくせに!詐欺!」


「お前にだけは言われたくないよ」


とにかくお似合いだと思った
こんなデレデレした安室さんなんて見る機会は滅多にない

蘭たちには勘違いだって、伝えておくか

安室さんたちと別れ、また探偵事務所へ歩き出す


「安室さんがロリコンじゃなくて良かった」








「昨日また見たのよ!安室さんの彼女さん!
 やっぱりロリコンなのかしら…」


「え〜!」


ポアロにいるのに、安室さんのことペラペラしゃべり続ける園子
声は潜めているものの、もしかしたら聞かれるかもしれない

周りをうかがっていると、また園子がしゃべりだした

「だって、店に来る大人っぽいお姉様方には目もくれないじゃない?
 そういえば…がきんちょにはよく構ってるわね…」

園子の視線が突き刺さる
ごめん、安室さん
俺にはうまく伝えられそうにない



「いらっしゃいませ」


安室さんの声が聞こえて、俺達は自然と安室さんの方に目線を向けた
そこには、噂の彼女さんが立っていた

園子と蘭が無言で立ち上がって、2人に突撃していた
2人とも驚いて、目を丸くしていたけど、笑いながら質問に答えていた


園子と蘭が戻ってくると、「なんかすごいね」、「うん」とお互い頷き合っていた
ちらりとまた視線を安室さんたち向けるとロリコン疑惑と反対に幸せそうに笑っていた