■ 悪夢に巻き込まれる

「久しぶりね、なまえ」


私はベルモットを観覧車のすぐ近くの行き止まりまで追い込んだ
ベルモットをそんな簡単に追い込めるはずがない
きっと、これはわざと作った状況だ


「何をしているの」

「あら、それをあなたに教えたら、あなたはどうするつもりなの?」

「あのお姉さん、組織の人間なの?」

「ふふ、随分詳しいのね
 組織のこと全く知らないとは思ってなかったけど、今回の件にあなたが絡んでるのかしら
 それを知ったら、ジンはすぐに動くわよ」


今、私は脅されている
これ以上踏み込んだら、周りもただで済まないと


「ベルモット、私だっていつまでも守られてるわけじゃない
 戦う覚悟もなしに追ってくると思う?」


ベルモットの表情は、サングラスに隠されてよく見えない


「強くなったのね、まぁいいわ
 私はこのことを言うつもりはないし、あなたの周りに危害を加えるつもりもないわ」

「新一がいるから?」

「……It's a big secret……I can't tell you……
(秘密よ秘密… 教えられないわ…)
 A secret makes a woman woman……
(女は秘密を着飾って美しくなるんだから…)」


そういうと、ベルモットは立ち去った
私はただ、逃げ去る背中を見つめていた

握りしめていた携帯のライトが点灯していて、私は焦って開く
相手は赤井さんではなく、新一で「今どこにいるんだ?俺たちは医務室にいる」とメッセージが来ていた
赤井さんじゃない……赤井さん、お願い反応して……どんな願っても赤井さんから返事がくることはなかった







「なまえ、どこいってたんだよ!」

「……ごめん」


ベルモットの件は新一には言う気になれず、言わないことにした


「江戸川くんとなまえ、少しが話があるの、いいかしら」

「それじゃあ、俺たち先に観覧車行ってようぜ!」

「駄目よ!!」


明るい元太くんの声とは反対に哀ちゃんのひどく焦ったような声が響いた
いつもより、強情な哀ちゃんに、博士たちは待っていることになった







「哀ちゃん、どうしたの」

「あの人、組織の人間なんじゃないかしら……
 あなたたちも感じたでしょう、あのダーツも異様さ
 そして、今思えばあの目もオッドアイじゃなくて、義眼だったら……!
 そうなると、記憶喪失というのも嘘かもしれないわ」

「RUM……!」

「ありえるかもしれないけど……でも……」

「でも、どうして俺たちに嘘つく必要があるんだ?」

「それは……」


哀ちゃんは、コナン君が記憶を取り戻したら、組織の情報が手に入ると思っていることを察して、コナン君に怒鳴った


「あなたもしかしてあの女の記憶が戻れば組織の情報が手に入ると思ってるんじゃないでしょうね!?絶対に記憶は戻してはだめよ!
 もし、そんなことになったら、あなたが危険な目に遭うだけじゃない!!あの子たちも危険に晒されるのよ!!」


哀ちゃんが指さした先には子どもたちとお姉さんの姿はなく、ただ鳩使いと化している博士がいるだけだった


「あの子たちは!?」

「何やってるんだよ!!博士は!!」



急いで駆け寄るも、博士もいなくなったことに気づいて無かったらしく、居場所は分からなかった
すると哀ちゃんが「観覧車じゃないかしら、あの子たち乗りたがっていたから……」と言い、私と新一が頷く


「それだ!」


新一が走りながら、光彦くんに電話をかけるも無視されたようで新一が舌打ちをした

しばらく走っていると、光彦くんから電話がかかってきた
電話の声は歩美ちゃんで、観覧車の中でお姉さんが発作を起こしたらしい
変なことをぶつぶつと呟いていると慌てた歩美ちゃんの声が私の中に反芻した

何故か分からないが、凄く嫌な予感がした
私の中の何かがざわめいていた
落ち着かないこの緊張感に似た感じが私の体を駆け回っていた




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