■ 悪夢の始まりの朝

「なまえお姉さんこっちだよ〜!」

歩美ちゃんの声がして、振り向くとコナン君や哀ちゃんたちが立っていた
みんなに駆け寄ると哀ちゃんが目に入った
哀ちゃんの青いワンピースは凄く素敵で思わず「可愛いね」と言うと「…ありがとう」と少し照れたように返された

歩美ちゃんたちは博士とともに、チケットを買いに行くと走って行った
私たちはゆっくり歩いて行っても大丈夫かな
すると新一が突然立ち止まって、一人の女の人を見つめていた
その女の人は綺麗な髪の色をしていて、目はオッドアイだった


「お姉さん、どうしたの?傷だらけだよ?
 お友達と一緒にいないみたいだし…」


女の人は困った顔というよりかは、困惑したような顔をしていた


「日本語わからないんじゃない?」

「わかる、わかるわ……」

「お姉さん名前は?どこからきたの?」

「……分からない」


私たちは顔を見合わせた
哀ちゃんが「少し見せて」とお姉さんの頭の傷などを真剣な表情で見ていた
新一は「多分この人事故に遭ったのかもしれない」とお姉さんの横に置いてあったスマホを見ながら言った


「どうして、分かったの?」


私が聞く前に哀ちゃんが聞いてくれたので、私は黙っていようと口をつぐんだ


「このガラス、車の窓のガラスだ。今の車のガラスはこんなに割れないようになってるから、かなり古い車だ
そして、微かにガソリンの匂いがする
それにスマホがこんなに壊れる程の衝撃ってことは…自動車事故の可能性が高い」


すると、哀ちゃんは髪を耳にかけて、女の人の匂いを嗅いだ
哀ちゃんのこの仕草が可愛いなあと見ていたら、哀ちゃんに「なまえ」と怒られた
哀ちゃんは私の心が読めるのだろうか


「お姉さん、あと何か持ってない?」

「……これ」


暗記の時に使う赤いペンの文字を隠すやつのようなフィルムが5色くっついていた


「……何かしら」

「暗記のシートみたいだよね…」


すると歩美ちゃんたちが戻ってきて事情を話すと、歩美ちゃんたちも記憶を取り戻すのに協力することになった

新一が突然、お姉さんの写真をスマホで撮って、お姉さんは驚いてベンチから立ち上がって立ち去ろうとしてしまった


「お姉さんの仲間を探すために必要だったんだ!」

「仲間……?」

「うん」


このお姉さんはきっと記憶消失のせいで少しパニック状態なのかもしれないなと思い、私は鞄からいちご味の飴を取り出した


「甘い物、食べたら少しは気持ちが落ち着くと思いますよ
 よければ食べてください」


お姉さんは微笑んで、「ありがとう」と言って、受け取ってくれた
本当にきれいな人だな、スタイルも凄く良い
赤井さんもああいう女性、好きなんだろうなあと少し悲しくなった


「えーずるーい!私も食べたい!」


歩美ちゃんだけでなく、元太くんや光彦くんも食べたそうだったので、鞄から飴の袋を取り出して、みんなに分けた


「ありがとう!なまえお姉さん!」

「ありがとな!」

「ありがとうございます!」

「どういたしまして」



子どもたちはお姉さんの手を握りしめて、小走りで行ってしまった


「哀ちゃん、新一。私たちもいこっか」

「そうね」


私は新一があのお姉さんが事故に遭ったのかもしれないと言ったのを聞いて、昨日の事故を思い出していた


「(そういえば、私運転手の顔見てない……)」


あのお姉さんがそうかもしれないと思った私は赤井さんに昨日の事故の運転手に関することを教えてほしいとメールした
もし、そうだとしたら記憶を取り戻した時に新一だけでなく、哀ちゃんも危ない





コナン君と哀ちゃんと歩き回って、お姉さんのことを聞いてみるも、誰も見かけたことがないらしい
目立つ容姿をしているため、一度見たら忘れられないと思う


ダーツをして遊んでいる歩美ちゃんたちを見て、コナン君が「あいつら、本当に記憶取り戻す手伝いをする気あるのか…」と顔をしかめた


「まあまあ、せっかくの休日なんだし……」

「ここのエリアも私たちがやった方がよさそうね」

「そうだね」


子どもたちがダーツの景品のいるかの人形を貰って、喜んでいると博士が「今なら観覧車が空いてるぞー!」と言ったので、子どもたちは一目散に観覧車へ向かっていった


すると、哀ちゃんは高めの声でダーツコーナーのお兄さんにお姉さんのことを聞きに行った


「前に来た事があるなら忘れないだろうね」とお兄さんはお姉さんがやっていたダーツの場所を指さした

「……三つともダブルブル……」


ダーツの矢は全て真ん中に刺さっていた
昔に母と父がやっているのを見て、やってみたことがあるが、全然真ん中には刺さらなかった
哀ちゃんも異常さに気づいたようで顔が真っ青だった


「哀ちゃん、顔真っ青だけど大丈夫……?」

「え、えぇ……」


するとダーツコーナーのお兄さんが「あ、これをさっきのお友達に渡してもらってもいいかな?まだ色を塗ってないやつだから好きな色を塗ってくださいって」と白いいるかの人形を新一に渡した


「わかった!渡しておくね!」







「やみくもに探すよりか、あのお姉さんと一緒にいた方が良いかもしれないな」

「そうだね…」

「……灰原?」

「え、何…?」

「灰原、お前さっきから様子がおかしいぞ」

「哀ちゃん、具合悪いならどこかで休む?」

「……平気よ」


観覧車の方に着くと元太くんたちの声がして、辺りを見回した


「こっちだよ〜!」


上を見上げると、観覧車へ向かうエスカレーターから手を振っていた
元太くんが身を乗り出したので、コナン君が「戻れ元太!」と叫んだ

その瞬間、元太くんがずり落ち、宙づり状態になってしまった
なんとか段差に捕まっているも、いつ落ちてもおかしくない状況だ

元太くんが、手を離してしまったその時、お姉さんが斜面を滑って、元太くんに飛びつき、助け出したのだ

私はプラチナブロンドのロングヘアーの女性がこちらを陰から見てることに気づいた
あっちも私に気づいたようで、慌てた様子を見せず、逃げ去っていく


「新一、哀ちゃん、ごめん
少しトイレにいってくるね」

「それなら私も行くわ」

「い、いい!すぐ戻ってくるから!」


私は、急いで女性が逃げ去った方に走った


「(もし、あれがベルモットだったら……!)」



これが私たちの悪夢の始まりだった

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