■ 悪夢にはまだ気づかない

あのカーチェイスの後、私は車で眠ってしまったらしい
昨日の夜に、赤井さんから「今日は泊まるだろう?」と言われ、頷いた
そして一度私の家に着替えなどを取りに行ったところまで覚えているのだが、その後がさっぱりだ


目が覚めると赤井さんが何やら楽しそうに私の髪をいじったりしていた
変装はしておらず、赤井さんの状態だった

私は重大なことな気づき、目を見開く
私は下着にTシャツのみといったかなり際どい服装をしていた


「そ、その赤井さん」

「心配するな、着替えさせただけだ」

「……そうですか」


ホッとしたが、恥ずかしいことに変わりはなかった
そんな私の様子に気づいたようで赤井さんは私の額にキスをした


「昨日追っていた奴は組織の人間だったんだ
 機密情報を持ち出したらしい
 そのため公安だけでなく、FBIも動かなければいけなくなった」

「組織の人間……」

「心配するな、お前の顔は見られていない
 だがどこで会うか分からない、気を付けろ」

「はい」

「そろそろ朝食にしよう
 今日は水族館に行くんだろう?」

「あ……」


すっかり忘れていた私は、急いで準備を始めた
慌てている私を見て、赤井さんは笑っていた







私が朝食を食べているうちに赤井さんは沖矢さんになっていた
赤井さんは私が朝食を食べ終わったことを確認すると、「行きますよ」と私の手を引いて車まで連れて行ってくれた

車に乗り込んだところで沖矢さんは私の右手の薬指に指輪をはめた


「え……」

「お守りです」


沖矢さんはそれだけいうと、車を発進させた

ふとスマホを見ると通知がきていることを知らせるランプが光っていた
開くと、LINEの通知のようで相手はコナンくんだった

新一としてなら、別の連絡先からくるはずだからコナンとしての連絡なのかもしれないと思ったが、メッセージを見ると「昨日の事故について何か知らないか」と書いていた

これは完全にコナンくんというよりかは新一としての連絡だった

隣に沖矢さんがいるってことを知っている上で、正体をばれないためにのカモフラージュだろうか
多分だけど、沖矢さんは気づいてると思うんだけどな……

返事に悩んでいると、横から「昨日のことは他言無用で」と言われてしまったので、コナンくんには「知らないよ」と返信するしかなかった


「どうしてメッセージの内容が分かったの」

「何ででしょうね」


沖矢さんは全て筒抜けのようだ
私は車の外に目を向ける
すると、噂の二輪観覧車が見えてきた







「帰りは迎えに来れるか分かりませんが、一応連絡ください」

「うん、もしもの時はタクシーで帰るので大丈夫で…!」


言い終わる前に私の口は沖矢さんによって塞がれてしまった
唇をはなすと、沖矢さんは笑って「いってらっしゃい」と言った


「いってきます」


そういって次は私からキスをした


沖矢さんは驚いたように目を見開いた
目は完全に赤井さんだった


私は嫌な予感がしていた
赤井さんがまた目の前からいなくなってしまうかもしれない
そんな不安がよぎった


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