「…悪い」

唇が離れると、黒羽くんは私に謝った
すると、どこかに行ってしまった

私はその光景を黙って見ているしかなかった
バクバクと音を立てる心臓は今にも壊れそうだった








「…ねぇ、なまえちゃん、聞いてる?」


「えっ?何?」


「も〜!なまえちゃん、最近ぼーっとしてるよ!」


「ごめんね、何かな?」


青子ちゃんが唇を尖らせて、頬を膨らませていた
本当に女の子らしいなと頬が緩んだ

すると誰かが背中から抱き付いた


「!」


「水着を選びに行きましょうって話をしてたのよ」


「紅子ちゃん…くすぐったい…!」


紅子ちゃんが私のおへそのあたりを服ごしに撫でた
私はくすぐったくて、身をよじった
青子ちゃんが頬を赤くしてこっちを見ていた


「なまえ、スタイルがいいから水着が選び放題ね」


紅子ちゃんは私を後ろから抱きしめたまま前に進んでいく
後ろから押される感じで私も歩き出す

青子ちゃんが「待って!」と言って追いかけてくる





「なまえちゃん、快斗はどっちの方が好きだと思う?」

青子ちゃんが持っていた水着はどちらも同じデザインで違うのは色だった


「水色と深い青か、なんか水色好きそう…」


「じゃあ水色にしようかな!」


青子ちゃんが試着室に入っていくと、紅子ちゃんが出てきた


「紅子ちゃんは赤にしたんだね、すごく似合ってる」


「なまえはまだ選んでいないの?」


「んー私やめようかなって思って、どれも素敵で私にはもったいない」


「なまえ、自嘲的なのがあなたの悪いところよ
自信持ちなさい」


そういうと紅子ちゃんは「待ってなさい」と白い水着を取り出してきた
白いフリルが控えめについた水着に赤と青の小さな水玉模様がついていた

驚くくらいに私の好みにドストライクな水着を持ってきた紅子ちゃんは本当に何者?
でも、それは残念なことにお腹丸出しのビキニだった


「…布面積が」


「絶対似合うわ
私の目の狂いはない」


紅子ちゃんの圧力に負けて、私は試着室に入って、着替えた
恥ずかしくて出られず、ずっと中で、出るタイミングを見計らっていた


「やっぱり、似合ってるわ」


紅子ちゃんが突然試着室のカーテンを開けた


「紅子ちゃん!?」


紅子ちゃん、私がもし着替えてなかったらどうするつもりだ
ふと、壁にかかった時計が目に入った
試着室に私が入ってから20分は経過していた
こんなに私、中にいたんだ…

すると紅子ちゃんは私に近づいてきた
そして、私がかけていた眼鏡をはずすと「今日はつけない方が良いわ、伊達眼鏡なんでしょう?」と言ったので黙ってうなずいた


泳ぎ時に邪魔だし、メガネの日焼けしたら大変だもんな、うん
私は心の中で勝手に納得することにした