疑念
「安室どうしたの」

「なんでもないです、気にしないでください」

「嘘、敬語になってるし」

「……赤井がキールに始末されたそうです」


私は頭を鈍器で叩かれたような衝撃を感じた
あの赤井秀一が死ぬはずがない

「うそ…あの赤井秀一が……」


「なまえ」


その瞬間、頭が割れそうなくらいの頭痛がした
そんな中で頭の中に記憶のようなものが流れ込んできた


“なまえ、よく来てくれたな”

“私に殺させるつもりなの?”

“ああ、お前に殺されるなら本望だからな”

“バカ”


「うぅ…頭が痛い…!」


「なまえ!?」


今、頭に流れたのは私の記憶…?
男の人の声は、赤井さん、安室、ジンのどれでもなく、私の知り合いにはいない
あなたは一体誰?


「……ごめん、落ち着いたから大丈夫」


「……なまえは今でも赤井が好きか」


「安室……ごめん、わたし……」


謝罪の言葉だけが私の口からこぼれた
私はどうしてこんなに赤井秀一を求めている
何だか、それは愛とは違うもので、使命のような

私は赤井秀一のことを愛していると思っていた
でも死んだと聞いて、記憶が少し戻って、私の中で何かが変わった


「……お前まで赤井に奪われたくない!」


「安室…」


安室は私を痛いほどに抱きしめた


「赤井秀一を好きかどうかはわかんなくなった
 でも、私は赤井に会わなきゃいけないの」


「殺すためか?」


「前はそうだった…でも今は…」


“バレンシアは逃げろ
 奴には俺が殺したと思わせる”


“ライ、分かったわ”



「私の使命のようなもの…
 誰かとの約束………」


「でも、赤井は死んだ」


そんなことがあるのだろうか
赤井秀一が死ぬなんて

私は疑念を抱いていた


安室は完全に信じているわけではないが、死んでる可能性の方が大きいと考えている
私は少しも信じていない
現実逃避しているとかそういうわけではなく、赤井秀一ならどうにかして、死を回避している気がする

そう、ベルモットがキールがCIAだと疑っていた
それが、当たっていたらCIAとFBIが組んで?

あり得る可能性だが、安室には言わない方が良い
私と安室の目的は途中までは一致してるものの、結末は全く違うものだからだ


「好き、安室、好きだから
 不安にさせて、ごめん
 
 赤井秀一への愛がなくなったとかは分からない
 でも、私には安室しかいないの」


「俺にもなまえしかいない」


優しく抱きしめられて、涙が出た
安室を守らなきゃ、公安だっていつかはバレる

守らなきゃ、あれ、前にもこんなこと思ったような?
おかしい、そんなはずはない
だって、安室に出会ったのは最近なのに

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