偽装
「どういう意味?」
「君のことを調べたら、何もかもが偽装されたものだった」
「覚えていないの、何も」
なまえは苦しそうだった
なまえもずっともどかしく感じていたのかもしれない
「そうか」
「安室の本名は?」
「……なまえがすべてを思い出した時に教えるよ」
「じゃあ、頑張らなきゃ」
なまえはふわりと笑った
最近、柔らかい表情を見せてくれるようになった
元からこういった表情をする子だったのかもしれない
年は俺より少し年下だろうか
どこまでも純粋で、子どもっぽいが体は立派な大人だ
魅力的な体をしているため、男関係では苦労したんじゃないだろうか
特に組織内では……それでもベルモットたちが見張っていたおかげでこんな純粋な状態を保っているのかもしれない
なまえはどこまでも純粋だからこそ、脆くて壊れやすい
その上、一途だ
赤井を愛しているから殺すと言った時も心は歪んでいながらもその目は真っ直ぐだった
なまえは黒くなりきれていない
「なまえは今でも赤井を殺したいか?」
「ふふ、何でそんなこと聞くの?
安室が、私のこと好きでいてくれるなら私は赤井を殺さないよ」
赤井への一方的な愛が俺の愛で上塗りされたといえば聞こえがいいが、ただなまえは俺に依存しているだけだ
赤井への愛だって、そもそもは依存からきたものだった
愛されたいという思いから、自分に愛を与えてくれそうな人間を好きになったと思い込んでいただけに過ぎない
「赤井は俺が……」
「わかった」
なまえは笑った
純粋なまま、壊れている
“バーボン、なまえは少し厄介よ
デリケートだから、ちゃんと見てあげてね”
ベルモットでさえも、なまえの純粋な狂気を心配していた
なまえは嘘で塗り固められたような人間だ
ただ、愛されたいという思いだけで赤井を殺そうとし、俺の依存している
その中には純粋な狂気だけがあるのだ
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