灰色の私
「ただいま」


凄い勢いで、安室に抱きしめられた
痛いくらいだった

まるで、告白された時のような



「心配した」


心配するような時間でもないはずなのに、安室は震えていて、申し訳ない気持ちになった
私はそっと安室の頭を撫でた


「ごめんね」


「………」


安室は何も言わなかった
私も安室には何も言わない

頭の良い安室のことだから、私がどこにいて、何をしてたかなんてお見通しかもしれない
それで何も言わない私に何かを感じているのかも
なんて、深読みをしてみる


私は安室を守るために何も言うつもりはない
赤井秀一との約束だし、私自身が決めたことだ


「なまえはいなくならないでくれ」


「大丈夫だよ、私はずっといる」



私は嘘を塗り固めたような笑顔を浮かべた
安室は私の笑みに気づいているのかいないのか分からないけれど、私の唇に食いついた

安室が私の下唇を噛んだ
強く噛まれ、血が滲んだ


安室、私はそんなことをしても教えてあげられない


黒にも白にもなれない中途半端な私は嘘をついて、偽装をして、あなたを傷ついているのを気づかないフリをしながらじゃなきゃ、あなたを守れないの

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