一万打企画 | ナノ




\恋というにはまだ足りない/
「あの、降谷さん……これは一体…」


私は今、壁と降谷に挟まれている
俗にいう壁ドンである

別に事故で壁ドンしちゃった☆てへっ☆ってわけではなく、資料室に降谷さんが突然やってきて、壁ドンをしてきたのである


「壁ドンだけど…」

「それは分かりますけど…何で…」

「何でだろうね?
 みょうじはなんでだと思う?」

「そんなの分かりませんよ…」


降谷さんというよりは安室さん寄りだな、今……

それにしても、私は降谷さんを怒らせるのようなことをしただろうか
いや、しばらく降谷さん顔出してなかったし、そんなのなかったと思うんだけどな
え、本当にわからない


すると、降谷さんは私の頬に手を添えて微笑んだ
降谷さんはかっこいい
でも、日頃の降谷さんを見ている私としてはすっごく怖い

雨でもふるの?槍なの?槍ふるの?

そんな降谷さんでも、私は憧れているし、何度も命を救われている
私にとっての降谷さんは神様も同然なのだ


「私、降谷さんに悪い事しました…?」


「いや、してない」


「その、風見さんに呼ばれているので…そのどいていただけると……」


降谷さんは眉間にしわを寄せた
不機嫌ですオーラが全開だ
私、なんかまずいこと言ったの!?


「風見、風見って…みょうじは風見のこと好きなのか?」


私が風見さんを好き?
好きか嫌いかと言えば、好きだ
風見さんとは、降谷さん素晴らしいよね談義をよくする
それが長引いて、飲み会に発展したことも何度もある

降谷さんが言ってるのはそういうのではなく、別の事だろう
そういう仲かと言われればもちろん、否定する

風見さんは降谷さん大好きだから、私なんて眼中にない
私も同じく

ホモとかそういうのでなく、憧れの好きだ
私と風見さんは降谷さんに対するそういう感情が異常に強いらしい


「好きですけど…
 降谷さんが思ってるような意味ではないですよ」


「…俺は?」


「え?」


「俺の事はどう思っている?」


降谷さんはカッコいいし、優しいし、仕事もできるし……神様だ

良いところならいくらでも言える
唯一の欠点といえば、赤井秀一の前では脳筋になることぐらいだ


私は赤井秀一には何度か助けてもらっていて、降谷さんから聞いた事は信じられなかった
彼はそういうことをする人ではないと思う
1週間前ぐらいの東都水族館でだって、足を負傷した私を横抱きして……あれ

もしかして、そのことを怒っているのかな
そういえば…降谷さんと最後に会ったのはあの時だ

「その様子だと気づいたか?」


「東都水族館の件で…私が赤井秀一に助けられたからですか?」


降谷さんは一瞬動きを止めると、大きなため息をついた


「みょうじは本当に鈍感だな」


「え?」


気づいた時には私の唇に降谷さんの唇が重なっていた
そして、それはすぐに離れていった

触れるだけのものだったが、私の顔を真っ赤にするには十分だった


「後は自分で考えてくれ」


降谷さんがいなくなった資料室に私は座り込んだ
しばらくして、いつまでたっても戻ってこない私を心配して、風見が迎えに来た

それでも、私の顔は赤いまま
まるで魔法にかかったみたいだった




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