一万打企画 | ナノ




\これしか愛を表現する方法がないの/
「みょうじさんは今日も綺麗ですね」


「安室さんは相変わらずですね」


私は赤井さんから安室さんが組織の人間だと聞かされていた
そもそも、何で私が組織のことを知っているかというと、原因は江戸川コナンくんである

縁あって、知り合った時にたまたま組織に私が関わってしまい、命を狙われる寸前までいってしまい、赤井さんやコナンくん、その周辺の人たちに助けられた
それで、赤井さんと出会い、恋人になった

今は組織にも狙われることなく、一般市民として暮らしている

その時に安室さんも助けてくれた人の1人らしいが、詳しいことは分からない


「なまえさん」


聞き覚えのある声がして振り返ると、沖矢さん(中身は赤井さん)がいた
機嫌悪そうだ


「あ、迎えが来たみたいですね」


安室さんは笑っている
ああ、笑えない

安室さんは沖矢さん=赤井さんだって知らないからそんな言えるんだ
知ってたら、絶対この場で助けてくれるはずだもの


帰りの車の中で沖矢さんは言った

「覚悟しておいてください」


死刑宣告だ
終わった



沖矢さんは家に入ると変装を解いて、赤井さんの姿で私をソファーに押し倒した
服は沖矢さんのものなのに、顔は赤井さんだ


「あ、あかいさん…」


赤井は何も言わず、私の首筋に噛みついた
私の口からは甘い声が漏れる

赤井さんには噛み癖がある
情事の時は優しい噛み方だ
癖になっちゃったら、どうするのだろうか

「んん…」


「……」


キスマークではなく、噛み痕の残すことに何の意味があるのかは知らない
でも、これを拒絶したら、赤井さんを拒絶することにもなる気がして、できなかった
どんなに痛くても、泣き叫んでも、拒絶するような言葉だけは言わなかった


今日の赤井さんはいつも以上に無言だ
いつものように余裕でドヤ顔をしている赤井さんとは違って、赤井さんの瞳の奥ではメラメラと炎が燃えていた


噛み続けていたのがピタっと止んで、赤井さんを見ると、そのまま唇にキスをされた
さっきとは違い、優しいキスだった


「すまない、安室くんとあまりにも親しそうで嫉妬してしまった」


「へいき…」


赤井さんは噛み痕を残した後は優しくなる
妙に素直にもなる

ジョディさんに赤井さんの昔の恋人の話を聞いたことがある
この恋人が死んだ時、赤井さんの仲で何かが壊れたんじゃないだろうか

赤井さんはきっと、昔の恋人みたいに私を失いたくなくて、縋り付いている
私も赤井さんの弱みを知っていて、縋り付いている

私が赤井さんを解放してあげれば、赤井さんは自由になれる
それが分かっているのに、私はそれができない

私たちは一緒にいたら、ダメになる
分かっているのにできない私は、臆病だ

赤井さんを失いたくなくて、誰かの赤井さんになるのを見たくなくて……逃げてる

だから、赤井さんは噛み痕で、私はそれを受け入れることでしか愛を表現する方法がない



「赤井さん、これからもずっと好きだよ
 私から離れないでね」


また首に甘い痛みを感じて、私はゆっくり目を閉じた




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