「お前、いつの間にチャーリー警部と仲良くなってたんだよ…」


「そりゃあ…ずっと一緒いれば仲良くなるよ…
 そもそもそうなったのは快斗が渡してきたキッドカードのせいだからね」


「あれは悪かったって…」


謝っているものの、全然反省の色が見えない快斗と視線を合わせないように背を向けた
すぐに背中に温かさを感じて、抱きしめられたと気づく

快斗の手が私のお腹に回る
少しくすぐったくて、身をよじるとますます抱きしめる力が強くなった


「悪かったって…
 どこでも連れていくから…」


「デート、約束してたでしょ」


「ああ」


「星を見に行きたい」


「仰せの通りに、お嬢様」


快斗の状態でキッドの台詞を聞くと、なんだかおもしろくて笑った
むすっとした快斗に可愛いというと、唇にキスをされた








夜になり、家でゴロゴロしていると突然スマホが震えた
快斗からの電話だった
出ると、「外に出てこいよ」と言われた
玄関に走り、ドアを開けると快斗が立っていた


「ど、どうしたの」


「デートするんだろ?」


「い、今から!?」


お風呂に入ってしまったけど、髪は乾かしたし…出ようと思ったら出れる
でも、今パジャマだから、着替えなきゃいけない
デートなのにちゃんとしてない


「待ってるから準備してこいよ」


「う、うん」


私を急いで服をタンスから引っ張り出した
メークを控えめに、髪も少しだけアイロンをかけて

一応、カーディガンを持っていこう
鞄にカーディガンを突っ込み、玄関へ走る
快斗は私が靴を履いたのを確認すると、自然とと私の手を引き寄せた


「行くか」


「うん」


家を出ると一台の車が止まっていて、快斗が乗り込むのに続いて、私も乗り込む


「じっちゃん、ありがとな」


「坊っちゃんのためなら車ぐらいいつもでも出しますよ」


「え、もしかして後藤さん!?」


全く顔が違ったので、気づかなかったが、快斗を坊っちゃんと呼ぶということはきっとそういうことで…
見た目は優しそうなおじいさんだ


「素顔では初めましてですね、なまえさん
 いつも坊っちゃんがお世話になっております」


「いえ、こちらこそ…」


何て呼んだらいいのか分からなかったので、じいやさんって呼んでもいいですかと聞くと、お好きに呼んでくださいと優しい声で返ってきた
もしかして、あのおばあさんに向日葵を見せたいと快斗に頼んだ人ってじいやさんなのかな


「なまえ、すぐ着くから」


「うん」


外を見ると町がキラキラしていて、綺麗だった
どんどんそれが遠ざかっていく

しばらくすると、昔にお母さんと来たことがある展望台に着いた


「着いたぜ、なまえ
 んと、じっちゃん…」


「分かっております
 楽しんできてください」


「ありがとな」


快斗は車から私を出すと手を引いて、展望台に向かった
展望台まで上ると見晴らしの綺麗な広場に出た


「わ、綺麗」


町の明かりの邪魔がない空はたくさんの星で作った絨毯のようだった
私はただ、目を奪われた

いつもなら町のあたりでかき消されてしまう星もこの場所では輝ける
それを私も見ることができる

それだけでこの場所はとても特別な場所に感じられた


「なまえ…」


手をつかまれて、驚いて、快斗を見るといたずらっ子のように笑っていた
首をかしげると、快斗が指をパチンと鳴らした
すると快斗の手にはいつの間にか細長い箱が乗っていた


「え?マジック…?」


「まあな…お前にあんまり見せたことなかったからさ」


「ありがとう、嬉しい」


快斗は私の手を離して細長い箱を開けた
中には宇宙のように輝く石のネックレスが入っていた
輝くそれに私は目を奪われた


「プレゼント」


「え、私に?
 こんな綺麗な……」


「お前以外にこういうのあげるやついねーよ」


「……ありがとう、嬉しい」


思わずさっきと同じ言葉が出た
本当にそれしかなくて言葉が上手く思いつかなかった

私は軽くパニックを起こしている間に快斗は私の首にネックレスをつけていた


「綺麗だ」


「快斗も綺麗だよ」


「瞳が?」


「瞳も」


私にとって快斗は綺麗で純粋な存在だ
私はそんな快斗が好きだ
例え、快斗の黒い部分を見てしまったとしても私は快斗を好きだと言える
私にだって黒い部分があるから

快斗の綺麗な瞳は私だけが知っていればいいと思うのはすごく我儘だね
そんなの無理だってわかってしまっても思ってしまう
私が快斗と出会う前から、青子ちゃんや紅子ちゃんは快斗の瞳を見てきたんだ
少しだけ、悔しい


「快斗、今日は連れてきてくれてありがとう」


快斗は何か言いたそうだったが、私は背伸びをして快斗の唇にキスをした

今日だけは私以外の誰も見ないでほしいなんて私の我儘でしかない
でも、今日だけは我儘を言わせて


「快斗には私だけを見ていてほしい」


私をあなたの瞳の中に閉じ込めてほしい

快斗は当たり前だろと笑って、私の唇にキスを落とした

prev next