「そんなの裏切り者が私の発言を利用したに過ぎないわ!
 そんな曖昧なことばかりで人を犯人扱いしないで!」

なつみさんは激しく否定するように声を張り上げ、手を動かした
他の人は何とか言えない顔でなつみさんを見ていた


《そうですか…本当は自首してもらいたかったのですが……
 もっと確かな証拠が欲しいなら後でお見せしますよ
 あなたのパソコンのデータ、2枚の向日葵を破壊するための全計画書をね》


新一くんの話を聞いて、なつみさんは諦めたようにフッと笑った


「どうやら、もうごまかしようがないようね
 初めは、こんな大事にするつもりはなかった
 停電を利用して2枚の向日葵を始末すればすべてが終わる予定だったのに…
 キッドに続いて、黒服まで邪魔を…」


「だが、何故だ……」


「今回の火災や飛行機の爆破……下手したらあなた自身も死んでいたかもしれないのよ、なつみ!」


「私はそれほど、ゴッホの向日葵を愛しているの!
 あの贋作がゴッホの向日葵と並んで展示されるくらいなら死んだ方がマシよ!」


なつみさんの言葉に嘘偽りはないようで、それが動機
ゴッホの向日葵への愛が歪み、今回の事件を引き起こした
愛は時に人を狂わせる


《あんたの言動には何の真実味もねーよ
 5枚目の向日葵は論文で本物だと証明されたじゃねえか
 ゴッホとゴーギャンは同じ布を分けて絵を描いていた
 鑑定士のアンタなら間違いなく知ってるはずだ》


「そ、それは…」


《本当に死を覚悟した計画なら、飛行機の爆破を着陸直前にしたりしないはずだ……
 それにレイクロックに残って、キッドの妨害をしなかったんだ?
 あんたは所詮、自分の都合のいいようにしか考えられない犯罪者だ
 決して、学芸員じゃない》


なつみさんの腕に手錠がかけられた
建物が崩れるような大きな音がして、私は外に出た

すると、哀ちゃんたちがキッドを見たと騒いでいるのが聞こえて、私も追う
チャーリーさんも私たちを追うようにこちらに走ってきた

快斗、どうか無事でいて

みんなが湖の方に向かったのを確認して、私は林に入る
快斗なら、蘭ちゃんを安全な場所に置いて、この辺に隠れたはずだ


「どこ……快斗……」


その時、誰かに口を手で覆われ、引き寄せられた



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