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ーー本日、アームストロング少将とマスタング大佐率いる部隊が、国民に多大な犠牲を強いる錬金術の大実験を企てた軍上層部を攻撃。
両隊はすみやかに中央司令部議会等を占拠しましたーー

ブレダやフュリーたちが身を寄せるラジオ・キャピタルから、国民向けの放送が流された。

ーー大総統閣下の留守を狙い、悪しき大実験を敢行した首謀者のうちクレミン准将とエジソン准将は拘束され、両将率いる国軍も武装解除。
ブラッドレイ大総統閣下とそのご子息セリム・ブラッドレイさんは、混乱の中に命を落とされました。
マスタング大佐は大総統閣下の意思を継ぎ、国の安全と今後の対策を関係各位と…ーー

「ーーあ!いたいた、ホーさん!」

リンとランファン、メイは、忘れていたが一応不法入国者だ。
本来の目的であった賢者の石も入手したことだし、面倒事になる前にとエドワードらに再会を約束して、早々にシンへと帰っていった。

「いやぁ。見つかってしまったか」

「あたしらに何も言わないで行こうとしてたでしょ。そうはさせないよ」

姿が見えなくなってしまったホーエンハイムを探していたクライサは、彼がこの場を離れる前に何とかその姿を発見することに成功した。
それに苦笑して、ホーエンハイムはクライサの頬に手を伸ばす。

「目が赤い」

「…あー……あたし、こう見えて意外と泣き虫なんだ」

持っていかれたものを知るホーエンハイムは、それだけで意味することを理解してくれたらしい。
浮かべられた微笑みに、クライサは頷く。

「……行くんだね」

エドワードとアルフォンスにも告げず、ホーエンハイムは行こうとしていた。
どこに?
そんなこと、聞かずともわかる。
アルフォンスを失ったエドワードに、彼は言っていたじゃないか。
彼の命の残りは『ちょうどひとり分』なのだと。

ホーエンハイムはそれに言葉でなく微笑みで返して、その大きな手のひらでクライサの頭を撫でた。

「息子たちを、頼むよ」

見上げたそれは父親の顔。
断る理由はなかった。

「……ダメだよ」

なかった、けど。

「ダメだ。…あたしじゃ……時間が足りない」

共にいたい。
出来るなら、ずっと、一緒にいたい。
共に旅したあの時間が、とてもとても大切なものだから。

けれど、ダメなのだ。

「頼まれても困る。ダメなんだよ。あたしじゃ、あたしの時間じゃ、短すぎるんだ」

何度も何度も、首を横に振る。
溢れ出してしまいそうだった。
いつ来るとも知れない、終わりの時への恐怖。
先の先まで、家族や仲間たち、友と並んで歩めないことが、とてつもなく寂しかった。

ホーエンハイムの手のひらは、クライサを離れなかった。

「それでも君に頼みたい。…と言う俺は、ひどい奴かな」









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