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エドワードと共に戻ってきたアルフォンスが目を覚ませば、メイは彼に抱きついて声を上げて泣いた。
おかえり、と迎えたホーエンハイムは彼の手を握り、アルフォンスは数年ぶりの身体の感覚にあたたかさをおぼえる。
シグには大泣きと共に強く抱き締められ、皆に笑顔で迎えられた。

「これでお前の旅も終わりか」

怪我の手当てを済ませてから、クライサは親友の姿を探した。
同じように病院に運ばれていた彼は、やはり右腕のない状態で親友を迎え、クライサを驚かせた。

「だね。お姉ちゃんともケリつけた。エドの腕とアルの身体も戻った。あたしの旅の目的は達成出来たわけだ」

「……だが、お前の寿命が縮んだ」

「正しくは伸びたんだけどね。ほんとならあそこで死んでたんだし」

胸ポケットの煙草に伸びた手を叩きながら平然と返せば、リオの表情は沈んだ。
無理もない。
あの時、クライサが死にかけるきっかけとなった人形兵は、リオを狙っていたのだから。

「どうせアンタ、『俺を庇って…』とか思ってんでしょ」

「いって!おい、やめろって!」

やれやれと溜め息をつきながら頬を引っ張ってみた。
伸びが悪い。
チッ、と舌を打ち八つ当たり気味に頭を叩く。

「って!…お前……」

「自惚れんな、ばーか。あれはあたしが油断してただけ。あたしのミス。自業自得」

敵地の真っ只中にいたあの時に、気を抜いてしまったのは確かに自分だ。
誰かを責めることじゃない。
リオとの会話が気を抜かせたとか、そんなことは関係ない。

「あんなギリギリじゃなくてもっと早く気付いてれば、もっと上手く対処出来たもん。油断してたからうっかりアンタ庇っちゃったってだけ。ちゃんと気付いてれば庇ったりなんかしなかった」

「……なんか物申したい発言されてる気がする」

「気のせいだよ、ばーか」

「気のせいじゃねぇな」

だからリオのせいにする気はさらさらない。
彼を恨む理由がない。
クライサはそう笑って、再び彼の頭を叩いた(実は地下で食らったやつの仕返しだ、とは言わない)。

「……兄貴たちには言ったんだな」

「言った」

「どうだった?」

肩を竦める。
エドワードとアルフォンス、ロイやホークアイたち。
隠していてもいずれバレるのだろうからと、早々に事情を話した時の彼らの顔は、何とも言えないものだった。
驚きと悲しみと、様々なものが混ざり合った表情を前に、クライサは逃げ出したことを自覚している。
居たたまれなくなって、他の様子見を言い訳にしてその場を離れたのだ。

「まぁ、仕方ないことだよね。いきなり『あたしは残り少ない命です』とか言われて、はいそうですかって答えられる人たちじゃないもん」

「ったく、お前は俺が殺す予定なんだけどな」

「悪いけど左腕一本で殺されてやるほど甘くないよ?むしろフルボッコにしてやるし」

「腕一本なくしたところで終わりゃしねぇよ、俺は」

「そりゃ楽しみだね」

けらけらと笑うクライサを、リオは複雑な心地で見つめた。
エドワードやアルフォンス、ロイ、その誰よりも事実を信じたくないのは彼女の筈なのに、クライサは普段通りに笑うのだ。

(ああ、そうか)

諦めている、のだ。









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