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エドワードに素手で殴られ続け、倒れた『フラスコの中の小人』の姿に先の涼しげな顔はない。
神とやらをおさえられない。
悲鳴のような叫び声を上げた瞬間、先ほどと同じように衝撃が人々を襲い、エドワードはとっさに倒れたままのクライサを庇った。

『フラスコの中の小人』は彼らには構わず、賢者の石を求めてグリードに飛びかかる。
彼の腹に腕を突き立て、その体内から石を奪おうとした。
それに抵抗して、リンはグリードを掴んで放そうとしないのだが、どうしたって生みの親に引かれる力のほうが強いのだ。
このままではリンまで巻き込まれてしまう。
そう判断したグリードは、最初で最後のウソをついた。

「来い!!ランファン!!」

腕と身体の接合部分を炭素硬化で固め、そこをランファンの機械鎧の刃が切断する。
そこで、リンの体内からグリードは消えた。

『はっはァ!!!うまくうるさいガキから分離出来たぜェ!!!』

父の体内へ戻ったグリードは、彼の足を自身の能力によって脆い炭に変え、崩し去ることに成功した。
だが、

『小賢しい!!!消えよグリード!!!』

父には逆らえきれず、彼を映した影は急激に薄れていく。
消えるのだ。
リンが彼の名を呼ぶ。
グリードは、その少年少女の表情に、なんて目で見やがる、と舌打ちした。

『ったく、チビたちもリンも、随分俺様になめた態度とってくれたもんだ。………』

彼が欲してやまなかったものは、確かにそこにあった。
消えゆくグリードの声は、どこか満ち足りていたようだった。

『ああ、もう十分だ。なんも要らねぇや』

エドワードが駆ける。

『がっはっは……じゃあな。魂の……友よ』

突き出した拳が、『フラスコの中の小人』の身体の真ん中に風穴を空けた。

「クセルクセスの皆を解放しろ。そして生まれた場所へ帰れ、『フラスコの中の小人』」

胸の中心に空いた穴から、影が黒い触手となって現れた。
幾本も伸びたそれは、『フラスコの中の小人』の身体をとらえ、内へ内へ詰め込むように一点を目指して潰していく。
おぞましい断末魔が消えると、同時にその姿も跡形もなく消えた。


ーー思い上がった者に絶望を。

真理の扉は、かの者にも正しき絶望を与えたのだ。







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