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「ある日、大佐が客を連れてきた。……それが、エド」

『よろしくな、クライサ』

まだエドワードが国家資格を取ったばかりの頃だ。ロイが彼を連れ、クライサの病室にやってきた。
彼が挨拶をしても、もちろんクライサは何も言わなかった。その目に彼の姿を映そうともしなかった。

しかし、ロイが退室し彼と二人きりになった時

『……人体錬成したって?』

エドワードが発した言葉に、少女の目が僅かに揺れた。

『オレもしたんだ。人体錬成』

ベッド脇の椅子に腰掛け、エドワードは語り始める。
母を亡くしたこと、弟と共に人体錬成を試みたこと、失敗した結果手足と弟を失ったこと、弟の魂を鎧に定着させたこと、今の彼女と同じ状況に陥ったこと、弟を元の身体に戻すと決意したこと。
全てを話してから、少女の空を思わせる色の髪を撫でた。
クライサの眼は揺れ、肩が小刻みに震える。

彼が自分と同じ罪を背負っていると知ったからか、彼の人柄ゆえか。
漸く少女は、口を開いた。




全てを話し、震える少女を胸に抱き、エドワードは優しくその背を叩いてやる。少女が少しでも安心するように。

そして、彼女はその目に光を取り戻したのだ。





笑顔を取り戻し、エドワードやロイ以外の人とも明るく話せるようになったクライサを引き取ったのは、ロイだった。
クライサが炊事・洗濯・掃除などの家事をする代わりに、ロイが彼女に居場所を与える。
姉と暮らしていた頃から家事は得意だったので、彼に引き取られてからもこれといった苦労はなかった。

その後国家資格を取り、ロイの部下として東方司令部で働き始めた。
仕事の一つとして出向いたリオールでエドワードと再会し、アルフォンスと会い、今に至る。


「……ま、こんなもんかな」

実際、エドワードとの付き合いはそれほど長いものではない。クライサが入院している間の二、三週間程度だ。

それでも、二人は過去あったことを話し、共に遊び、笑い、怒られ、同じ時間を過ごした。
いつだったか、ホークアイに『なんだか兄妹みたいね』と言われたことを覚えている。それほど仲が良かったのだ。

「大佐とエドには感謝してるよ。今こうして笑って話せるのは、二人のおかげだからね」

カップに手を掛けて、冷めてしまった紅茶を一気に飲み下す。一度大きな溜め息をついてから、仕事再開のため机に向き直った。
その時、

「アルにクライサ、大佐が呼んでるぞ」

部屋に入ってきたハボックの言葉に、彼女の顔が歪んだ。

「え、何の用?」

「タッカー氏の自宅を訪問するんだと。ついて来いってさ」

「タッカーさんとこに?」






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