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ーーあんなガキが覚悟してて、俺だけが出来てない、なんて。

そんなの、ダセェにもほどがあるだろ?






エドワードたちが次の手に出るその“瞬間”を待っていた頃も、二人の闘いは続いていた。
破壊、再構築の両腕の錬成陣を使いながら、スカーは満身創痍のブラッドレイを相手取る。
しかしブラッドレイの勢いは衰えることなく、それどころか迫る死期を感じている彼はまさに死に物狂いで襲いかかってくるのだ。

「……っ!!」

腿を抉った刃に、スカーの左足が折れる。
ブラッドレイの右眼が光り、追撃の刃が振るわれる。
脇腹を抉られ、更に続こうとした攻撃をスカーは身を仰け反らせて辛うじて避け、右足をバネに後方へと跳ぶが、ブラッドレイがそれを許さなかった。

「ここまでかね、イシュヴァール人よ」

退避のみに意識を向けていた身体は、懐に飛び込んだ殺意に対せない。
心臓を狙って突き出されんとする剣。
破壊も再構築も間に合わない。


その時、ブラッドレイの身が揺れた。

「ーー!!」

後方に感じた殺気に、素早く身を翻す。
振り返りざまに振るった剣は、確かに標的をとらえた。

「……な」

だが、そこにあった笑みに、ブラッドレイは右目を見開いた。

今まさに振り下ろされようとしていた右腕は、彼の剣によって肩から斬り離された。
意志をなくして落ちていく。
それが握っていたものは、しかし剣ではなかった。

「ーーああ」

ブラッドレイの身体が驚愕に静止したのは、ちょうど一秒。
男は言った。

「これで俺は、あんたを永遠に越えられない」

胸の中心に、刃が突き刺さった。
ゴトリと音を立てて、宙を舞っていた右腕が落ちる。
それが握るのは剣の鞘。
ブラッドレイの胸に深々と刺さった愛剣を、リオは左手で握っていた。

「……ふ」

血に塗れた口が笑みに歪む。
後ろへ傾いだ体。
既にその手は剣を取り落としていた。

「全く…剣士が利き腕を捨てるとはな」

「仕方ないでしょう。あーでもしなきゃあんた、俺の攻撃なんか弾いちまうんだから」

四肢を広げて倒れたブラッドレイの傍らに、リオは先をなくした肩を押さえながら腰を下ろした。
彼の胸から抜いた剣は、今は足元に転がっている。
それを再度握る気力も、必要も今はなかった。

「最後の最後で、お前のような未熟者に一本取られるとは…我ながら情けない」

「はっは。たまにはネズミだって、ネコやらトラやら噛みますよ」

「純粋な剣技で負けたなら、まだ納得のしようもあるのだがね」

「そんなの何十年かかると思ってんですか。まぁ、あんたがジジィになってからなら勝てるかもですけど」

「…まったく、お前は昔から口が減らんな。生意気な目つきも変わらん」

「その口が減らない生意気なガキを拾ってきたのはあんたでしょうに」

「そうだ。そしてそれを後悔したことは一度もない」









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