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そこにいたのは男だった。

『神を我が内に捉え続けるために、莫大なエネルギーが必要なのだ。この国の人間には、そのエネルギーになってもらった』

土煙の中から足を踏み出す。
その度に、足を覆うサンダル状の履き物、下半身に纏う衣服が錬成される。
モーションは、ない。

『今や、神も人もすべて私の中だ』

「くそ……やりやがったな」

ホーエンハイムの悔しげな声に、男は笑う。

『ああ、成功だ。協力感謝するよ、諸君』

胸元まで垂れた金色の髪。
こちらを見据える鋭い眼光。
『フラスコの中の小人』のその姿は、まさしく人間そのもので、さらにエドワードに酷似していた(おそらく、ホーエンハイムの若かりし頃の姿なのだろう)。

『ご苦労、人柱諸君。お前たちの役目は終わった』

玉座のような椅子に腰を下ろす彼は言った。
もう錬金術を使うことも、扉を開けることもしなくていい、と。
そして肘掛けを指先で軽く叩けば、彼を中心に風が起こり、グラトニーの腹を出たあの時と同じように、錬金術が使えなくなってしまう。

『さらばだ、人柱諸君』

直後、遥か上空から雷のような衝撃が轟音と共に落ちてくる。
天井に大きく空いた穴。
地上にある中央司令部も大騒ぎになっているだろう。

「全員俺のそばを離れるなよ!」

絶えない攻撃を、唯一この状況でも錬金術が使えるホーエンハイムが受け止めた。
エドワードたちは皆、ホーエンハイムのそばに集められていたため無事は無事なのだが、術を封じられているために彼の援護をすることも反撃に出ることも出来ない。
また男の指先が肘掛けを叩けば、勢いを増した攻撃を防ぐホーエンハイムの手が灼けていく。

『ほう……たかだか50万人分の賢者の石で頑張るものだな。だが、時間の問題だ』

言うなり、男は足で床を叩いた。
すると泡立ちながらめきめきと剥がれ、エドワードらのほうへ向かって壊れていく床。
ホーエンハイムは上からの攻撃を防ぐのが精一杯で、エドワードやアルフォンスたちは錬金術を使えず、足元まで防御が回らない。

しかし、少女がその侵攻を止めた。

「メイ!!」

「地面の防御はお任せください、アルフォンス様」

床に両手のひらをついたメイは、自身らの足元に渦を描くように防御の陣を張っていた。
彼女の錬丹術とスカーの錬金術には術封じが通用しない。
そして地の力の流れを読み、利用するのは錬丹術師の十八番だ。

「しかもその力が大きければ大きいほド…こちらの利用できる力も大きくなるんでス!!」

やれやれ、と言うように溜め息をついた男は、持ち上げた左手のひらに球状の物質を作り出した。

『あまりここを壊したくはないのだが……まぁ、後で再生すればいいだけだ』

呼吸をするのと同じくらい、簡単に作り出されたそれ。
当然ただのボールではなく、大きなエネルギーを纏いながら膨らんでいくそれを見て、ホーエンハイムは顔色を変えた。

「ちょ…お前、それ…」

『気付いたか。神を手に入れた私は今や、掌の上で疑似太陽を作ることも可能だ』

疑似太陽。
彼の手の上にあまりにも容易に作られたそれは、あの巨大な太陽のミニチュア版だと。
それを聞いた他の錬金術師たちの顔色も変わる。
太陽は、軽い原子核同士が融合して重い原子核となる原子核反応、核融合をエネルギー源としている。
それを解放され大量のエネルギーが放出されてしまったら、ホーエンハイムやメイがいくら防御に踏ん張ったところで全く意味がない。

『消えて失せろ。錬金術師』









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