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この国が軍事国家である限り、この先またいつ内乱や他国との衝突が発生するか分からない。
この国は守れても、他国の人間をまた大量に殺すことになる。

それを防ぐために考えられるのが、民主制への移行だ。
今はほぼ軍の傀儡となっている議会を在るべき形に戻し、他国と協議を持ち、ゆるゆると軍備を縮小して生き残りの道を探る。
軍備縮小の中には国家錬金術師制度の廃止も含まれるそうだ。

「ちょっと待ってよ…それって…」

乱世の英雄は、平和な世においてはただの大量殺人者となる。
ロイだけでなく、人体実験をしていたノックス、もしかしたらホークアイも、イシュヴァールでの非道を裁かれることになるかもしれない。
軍人でいることが、軍服一枚が今の彼らを守っている。
ロイはそれを承知で上を目指しているのか。

(そんなの、自滅の道だ)

あの内乱の発端は、エンヴィーがイシュヴァールの子どもを撃ち殺したこと。
裏で糸を引いてたのは人造人間。
しかし、実行したのはロイやホークアイ、他の軍人たちだ。

沢山の人の人生を、その人の許可もなく終らせた。
その自分たちが、勝手に死にたい時に死ねるわけが無い。

「だからせめて、私たちの次の世代には笑って幸せに生きて欲しいんだ」

そう言って、クライサへと微笑みを向けた。
だが彼女は、握り締めた拳を震わせている。

「…そんなのズルい」

そんなのはおかしい。
自己犠牲なんて、単なる自己満足だ。
嫌だ。
大切な人を犠牲にして、幸せになんてなりたくない。
彼らにだって、幸せになる権利があったっていいじゃないか。

「自己犠牲ではない。イシュヴァールを生き残った者としての、私たちなりのケジメだ」

ロイは、冷めた珈琲の入ったカップを見下ろした。
残り僅かになったそれに映った自分は、ちゃんと笑えている。

「私たちの心配をする前に、君にはやることがあるだろう?」

たとえ行動を制限されていようが、達成しなければならない目的が。
そして、彼らの目的も。

「鋼のとアルフォンスが元の身体に戻る日を、君だって待っているのだろう」

「……待ってるんじゃないよ。二人が身体を取り戻す場面には、あたしもいるって決めたんだ」

「それなら尚更だ」

他人の将来の心配をするより、自分たちの目的に向かって進むのを優先しろ。
そう言われては、頷くことしか出来やしない。

「……お兄ちゃん」

(もし、)

もしも、その時が来たら

(お兄ちゃんが裁かれる時が、来たとしたら)


「話してくれて、ありがと」


あたしは、どうするんだろう?






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