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日の沈んだ頃に目を覚ましたクライサは、ノックスの家にいるだろうアルフォンスとまだ眠っているらしいエドワードに置き手紙を残し、ホテルを出た。
向かう場所は一つ、ロイの自宅だ。

「…なんつーか…予想通り、だよね」

中央司令部に異動になった時、ロイもホークアイたちと同様にセントラルに転居した。
彼の家にはクライサが住んでいたので、もちろん彼女の荷物も新たな家に運んである(彼女の荷物を詰めるのはホークアイが手伝ってくれたらしい)。

中央勤務ということはやはり、東部にいた頃よりも忙しくなるだろうというのは予想出来る。
だから、未だ彼女の荷物が段ボールに詰められたままなのも仕方ないと思う。
ロイ自身の荷物ですら同じようなものなのだから。

クライサが呆れているのは、その家の荒れように、だ。

「まったく…掃除の仕方ぐらい覚えたら?」

「仕方ないだろう…忙しくて掃除どころではないんだよ」

「言い訳は聞きません」

まだ引っ越して来てからそれほど経っていない筈なのに、部屋には洗濯物やら何やらが散乱している。
家事の一つも出来ない兄に、溜め息をつくしかなかった。

家に向かう途中に食材を買ってきたので、空だった冷蔵庫の中身はそれなりに埋められた。
散乱した洗濯物を洗い、部屋の掃除をして。
久々の家事が楽しくて、ついついはりきって多めに作ってしまった料理も、まともな食事をするのは久しぶりだと言っていたロイがたいらげてくれた。

食後の珈琲を淹れて、ソファーに腰を下ろしゆったりとした時間を過ごす。
時計の針が半周した頃だった。
クライサが、ローテーブルにカップを置いて、向かいの席の兄を見つめた。

「お兄ちゃん」

お願いがあるんだ。
真剣な顔でそう言う彼女に、ロイもまたカップを放して目を合わせる。
先を促すと、クライサは少し言いづらそうに口ごもり、下を向いてしまう。
しかし彼が声をかける前に、覚悟を決めた目をして顔を上げた。

「イシュヴァールの話を、聞かせてほしい」

視線の先で、一瞬、ロイが目を見開いた。

(わかってる)

わかってるんだ。
それが、彼の傷を抉る刃になることなんて。

(それでも)

それでも、聞きたい。
彼の口から。









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