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「エックスフィート大尉。お前には私の護衛を命じたい」
人造人間であるブラッドレイに、護衛などは必要無い筈だ。
つまり、リオを側に置くこと自体が目的となる。
人質としてでなく、クライサたちにはわからない、別の意味で。
「強制はせんよ。断ってもかまわん。よく考えて選ぶといい」
「……はい」
どうして、彼は
(そんなに思い詰めた顔をしてるの?)
退室を許可され、先に廊下に出たロイに続こうとした時、ブラッドレイがアルフォンスを呼び止めた。
そして彼がそちらを向く前に、その胴を剣で串刺しにする。
鎧の中にはメイがいるのだ。
焦るエドワードたちの前で、ゆっくりと剣が抜かれる。
しかし、刃には血は一滴も付いていなかった。
「あの…何か?」
「…いや、行ってよろしい」
音を立てて戸が閉められると、五人は廊下を歩き出す。
そして暫く進むと、ロイ以外の全員の体から汗が吹き出した(アルフォンスはもちろん汗などかかないが、イメージだ)。
((((あぶなかった!!))))
(頭の上を剣が…!!)
危うくメイが串刺しになるところだった。
彼女が小柄で本当に良かった(鎧の足の部分に入り込んでいたため、ギリギリ刃に刺されずに済んだのだ)。
「大佐!ノックス先生の住所教えて!」
「あ?ああ…教えるのはいいが、あまり大っぴらに動くなよ」
「それと金!!小銭貸してくれ!!」
「金!?」
「いいから早く!!」
「ちょっと待……」
「かッ!!シケてんな!!こんだけしか持ってねーのかよ!!ペッ!!」
「チンピラか君は!!」
後で色々報告する、と告げ駆け出すエドワードたち。
それをクライサは追わず、呆気にとられるロイの隣で苦笑していた。
「……随分ばっさりと切ってしまったんだな」
こちらを見下ろす彼の残念そうな声に、好きで切ったんじゃないんだけどね、と溜め息をつく。
未練がましくいつまでも嘆いていたところで、切れた髪は戻りはしないのだ。
もう一生伸びないというわけではないし、短いのも悪くないと思えてきた。
また伸ばすにしろ、今はこの軽さを楽しみたい。
そうロイに告げると、彼は安心した顔で微笑んだが、直後に表情を変える。
「いかん!!中尉が!!」
「ホークアイ中尉?中尉がどうかしたの?」
「外で待たせていたんだ!!」
そして慌てた様子で駆けていった(怪我人が無茶をするものだ)彼を、クライサとリオは呆然と見送った。
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