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テーブルに叩きつけられたのはエドワードの両手だ。
衝撃でカップの中身が溢れるが、そんなことは気にしていられない。
「あいつには手を出すな!!周りの人たちにもだ!!」
エドワードの眉間には深く皺が刻まれ、アルフォンスは握り締めた拳を震わせている。
正直者だな、とブラッドレイは笑った。
そして銀時計を指し、問う。
それを持ち続けるか、否かと。
「いらんと言うなら斬って捨てるが」
そう告げられ、どうしていらないなどと言えるだろうか。
脅迫じみた(いや、脅迫としか言いようがない)それに、悔しげではあるがエドワードは銀時計を手に取った。
それに、満足気にブラッドレイは笑う。
ウィンリィを人質にとられて最も困るのはエドワードたち兄弟だが、彼女はクライサにとっても大切な友達だ。
迂濶なことは出来ない。
「君たちがここに連れて来られたのは、立場をわからせるためだ。それでいい」
「あの…」
そこで、アルフォンスが言いづらそうにしながらも口を開いた。
彼ら兄弟が人造人間側の監視下にいる代わりに、元の身体に戻る方法を探す旅を今まで通り続けさせてくれ、と。
彼の切実な願いは、幸い容易に承諾された。
ただ、余計なことはするなと釘を刺されはしたが。
「マスタング大佐とリミスク少佐はどうする?まさか軍を辞めるなどと言い出さんだろうな」
投げかけられた問いに、ロイは一度考える素振りを見せるが、自身の銀時計を手に取り言った。
飼い犬にはなっても、負け犬になるのは耐えられない。
「何より私の野望のために、軍服を脱ぐこともこれを捨てることも、今は出来そうにありません」
次いで視線を向けられたクライサは、カップに口をつけ、机上に戻してから顔を上げる。
「大人しくしていれば、あたしの目的は達成されますか?」
エドワードたちはどうだか知らないが、クライサは人造人間たちの計画には殊更興味が無い。
彼女の目的は、レベッカから真実を聞くことだ。
それが叶うと言うのなら、わざわざ彼らに逆らう必要も無い。
「ああ。いずれその機会もあるだろう」
「それならいいです。ただ、今まで通り、あたしもエドとアルの旅に同行したいんですけど…」
「かまわんよ」
ありがとうございます、と小さく頭を下げると、今度はブラッドレイの右目がクライサの隣を見た。
そこに座るのはリオだ。
彼は口を開くことなく、ただその隻眼を見つめている。
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