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「以前オレが入院してた時、見舞いに来てくれましたね」

第五研究所の件でエドワードとクライサが怪我を負った時のことだ。
その時クライサはその場にいなかったが、ブラッドレイが彼らの見舞いに来た、ということは後から聞いていた。
あの時はまさか彼が敵側の者だとは思いもしなかったが。

余計なことに首を突っ込むな、軍内部全てを敵と思え、時が来たら働いてもらう。
ブラッドレイの正体を思えば、確かに納得出来る言葉だ。
彼らにとって、クライサたちは貴重な人材であり、余計なことは知らなくていいといった存在でもあるのだから。

「ただ時が来るまで大人しくしていろ。そうすれば悪いようにはせん」

「ではその時が来たら、オレたち『人柱』と呼ばれる者以外の一般人はどうなるんですか?」

「余計なことは知らんでいいと言ったはずだ、鋼の錬金術師」

冷たく言い放たれた言葉に、エドワードは苦々しげに笑みを浮かべ、その銀時計を手に取った。
『鋼』の二つ名。
それを拝命された時、重苦しいとは思ったが、まさかこんな嫌な重みになるとは。

「この二つ名、捨てさせてもらう」

睨むような目で、しっかりとした口調で、彼は言った。
元はと言えば、自分たちのような子どもにも様々な特権を与えてくれると言うから、自ら進んで軍の狗になったのだ。
しかし、この国家錬金術師制度自体が、おそらく人柱選出の一環。
更には人造人間たちが行おうとしている、想像もつかない凶々しいことに加担させられると言うのなら、

「こんなものはいらない。オレは国家錬金術師はやめる」

エドワードの手を離れたそれが机上に落ち、鎖が音を立てた。
血にまみれた銀時計。
それを見下ろすブラッドレイは、やはり落ち着いた声で言う。
持っていろ、と。

「いらねぇ。他の術師にも言いふらして、あんたらの計画を頓挫させる」

「いや、君はこれを持ち続けなければならなくなる。自らの意志でな」

そんなわけがない。
そう返そうとしたエドワードは、口を閉ざさざるを得なかった。

「なんと言ったかな、あの娘。……そう、ウィンリィ・ロックベルだったか」

兄弟が、クライサが固まった。

「君達の幼馴染の娘、機械鎧技師、リゼンブール生まれ、君たちにとって家族にも等しい存在。今はラッシュバレーで仕事をしていて…友達とお得意様にも恵まれている。素直ないい娘だ」









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