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エドワードもアルフォンスも抵抗むなしく再び捕らわれ、父の命令に従ったエンヴィーによって『ラース』と呼ばれる者の所へ連れて行かれることとなった(ちなみに、スカーは上手く逃げおおせたようだ)。
幸いリオが殺されることはなく、彼もクライサたちと共に同じ場所へ向かわされるらしい。
ラースの犬か、と彼のことをヒゲの男が言っていたから、おそらくラースというのはブラッドレイのことなのだろう。

地下を出て、まず向かったのは軍のシャワー室。
グラトニーの腹の中で散々血を浴びていたから、それを洗い流す時間を貰えるのは本当に助かる。

(……ああ、本当に短くなっちゃったんだ)

いつもなら洗うのに時間のかかる髪は、肩より短い長さになっている。
普段の何倍も楽で、だからこそ寂しさに似たものが胸に生まれる。

用意された服に身を包み、支度を終えて廊下に出ると、同じくシャワーを浴びたエドワードたちが立っていた。
そして軍人に化けたエンヴィーの後を歩きながら、彼に聞こえないよう小声で会話を交わした。
話を聞くと、てっきり逃げたと思っていたメイは、アルフォンスの鎧の中にいるらしい。
地下での戦闘の際に彼女が負った怪我は、思っていたより酷いものだったようだ。

後でノックスを訪ねるということで一先ず会話を終えると、ちょうどエンヴィーが振り返った。
同時に一つの扉の前で立ち止まり、中へ入るよう促される。

「お前たちのことは、あとはラースに任せてある」

ラース、という名を耳にした瞬間、リオが肩を跳ねさせた。
クライサはそれを、彼の斜め後ろから黙って見ている。

開かれた扉の先にいたのは、ブラッドレイとロイだった。
用意された円卓。
それを囲む椅子にそれぞれ腰を下ろしながら、エドワードはロイに問う。

「……何があった?」

「色々あったぞ。天こ盛りだ」

それに対し、彼は溜め息と共に答えた。
フュリーは南、ファルマンは北、ブレダは西。
彼の信頼する部下たちが、悉くその下から飛ばされたことを。

「ホークアイ中尉は大総統付き補佐だそうだ」

「なんだそりゃ!!」

いわば、体のいい人質だ。
そのような有り得ない人事、普通ならばまかり通る筈が無い。

(なるほど。そういうことか)

普通なら、まかり通らない。
それが通ったということは、この軍が普通でない事を意味している。

「上層部の『一部』どころではなかった」

真っ黒なのは、『全部』だ。
自分たちが在籍する軍が、彼らウロボロス組の手の内にあったなんて。
ブラッドレイの態度にすっかり騙されていた。










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