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「お兄ちゃん!」

痛みに耐えるロイの元にクライサが駆け寄る。
いつまたグラトニーに見つかるかわからないこの状況で、このまま座っているわけにはいかないが、今の彼の状態では走って逃げ回ることは出来そうにない。

さて、どうしたものか。











グラトニーがまた何かを飲んだのだろう、大きな音が鳴り響いた。

「ダミーに引っかかってくれたかな?」

「怒り狂ってなきゃいいけどな」

クライサはあの場に座り込むロイそっくりの石像を錬成し、本人のコートを羽織らせてダミーにした。
おそらく今の音は、ダミーのロイを飲み込んだものだろう。

ロイの体を支えて歩くホークアイと共に、林を出たクライサたちは先程の空家の前へと戻ってきた。
既にノックスが車を用意しており、中にはランファンが乗っている(リオやホークアイが運転していた車はもう使い物にならないようだ)。
ロイを助手席に押し込み、ランファンを頼むと言ってホークアイを後部座席に乗り込ませた。

「オラさっさと乗って帰れ、役立たず!!」

「なっ…この状況でのこのこ帰れと言うのか!!」

「足手まといだ!!」

「帰って!!」

「本気で役に立ってません、大佐!」

「バーカ」

「最後のは完全にただの悪口だろう!!」

妹の発言(悪口?)に追い討ちをかけられ、この上なく凹む無能が一人。
呆れたようにエドワードが口を開いた。

「…っとに、このボケ大佐はよ。てめーはてめーの仕事をしろ」

「軍のトップが人造人間だなんて、放っとける問題じゃないでしょ?」

エドワードに続けたのはクライサだ。
長々話している暇はない、早く乗れ、と急かすノックスに、彼らは顔を見合わせた。

「満席だろ。行ってくれ」

エドワードが笑って言うが、もちろんノックスもホークアイもそれをよしとしない。
戦場に子どもだけ残して行けるわけがない、と彼らを止めようとするが、それを素直に聞くクライサたちではない。

「こっちはなんとしても、あのグラトニーって奴から情報を引き出さなきゃならないんでね。ここに残ってあいつと闘う」

子どもだから、などということは関係ない。
今回の作戦を言い出したのは自分たちだから、自分の尻拭いを他人にさせるわけにはいかない。

「子どもだけじゃねぇよ。俺も残る」

「リオ」

ここまで来たんだ、せっかくだから最後まで付き合ってやる。
リオはそう笑って、クライサとエドワードの頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。








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