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「いたた…」

「大丈夫?クライサ」

「うん、ありがと」

崩れてきた瓦礫をアルフォンスが防いでくれたおかげで、怪我はほとんどしていないようだ。
エドワードたちもそれぞれ体を起こしている。

「……何しやがったんだ、あいつ…!!」

全員の視線の先には、異形のものとなったグラトニーの姿。
彼を捕らえていたワイヤーは切られ、その口から腹部にかけて大きな穴が広がっている。
その中は真っ暗で、中心部に見えるのは巨大な眼。
そして歯とも骨ともとれるものが、その穴を囲うように突き出している。
まるで、巨大な口のようだ。

「周りを飲み込んだ…?」

先程とっさに取った行動は正解だったようだ。
あのまま動かずにいたら、今頃あの巨大な口に飲まれていたかもしれない。
古い建物の一部を、地面からバックリと飲み込んだように。

錬金術というものは、こんな化物をも造り出すのか。
ぞく、と背筋を寒気が走った。

「仕方がない。倒させてもらおう」

発火布を身につけたロイが言う。
せっかく捕まえた人造人間だが、状況が状況だ。
今優先すべきは生き残ること。
そしてグラトニーには顔と名を覚えられた。

「こいつを生かして帰す理由が無い!!」

ロイの右手から火花が走る。
それは瞬時に目標に辿り着き、弾け、大きな爆音とともにグラトニーは炎に包まれた。
しかし

ゲフッ

「炎を……」
「飲んだ?」

グラトニーを包んでいた炎は全て、その腹の中へと吸い込まれていった。
ロイの焔が効かない。
なんてこった。

再びその口が彼らを襲う。
素早くその場から逃れるが。

「使えねーー!!」

「だったら君がなんとかしてみせろ!!」

「て言うかついて来ないでよ!!」

「あいつが狙ってんのは兄貴だろ!!」

「いっそ尊い犠牲になってよ、お兄ちゃん」

「君は鬼か!!」

何故か同じ方向に逃げようとするロイに、兄弟とリオ、そしてクライサが迷惑そうに声を上げた。
ひらけた場所にいては標的になりやすいからと、散り散りに林の中へと逃げ込む。

だが、ロイが一人になってすぐ、グラトニーは彼に狙いを定めた。
巨体に似合わず、なんて素早い動きだ。

「しまっ…」

「何やってんだバカ兄!!!」

けたたましい程の怒声が響く。
それが誰のものかを確かめる間もなく、目の前のグラトニーの頭部に数本のナイフが突き刺さった。
グラトニーがよろけたことにより狙いは逸れ、ロイの近くにあった木が飲み込まれる。

「くっ……!!」

飛んできた枝から身を守ろうと身を屈めるが、腹部に痛みが走り、ロイはその場に座り込んでしまった。








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