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「複雑なんだねー。リンにそんな事情があったなんて驚きだ」

「今更そんな事情を聞いてるお前のほうが驚きだよ」

ちなみに、リンは彼自身の言う通りクライサにも事情を話していた。
それなのに彼女が知らないと言うのは、単にその話をしていた時にクライサが考え事に耽っていたのが原因だったりする。
それでいて、あれはタイミングが悪かっただけで自分は悪くない、と主張するものだから困ったものだ。

何にせよ、内密にではあるが、アメストリス国軍大佐とシンの皇族の繋がりが出来たことは、お互いに大きな収穫になった。

「しかし何よりの収穫はーー」

ロイが、また別の部屋に目を向ける。
そこにいるのは、相変わらずワイヤーのせいで身動きのとれないグラトニーだ。

「……おい兄貴。何だよ、これ」

「『グラトニー』と呼ばれる人造人間だ。気をつけろ。賢者の石が体内にあるから簡単に死なんぞ」

リオの質問に、ロイがさらりと返した。
彼らの脇で、ノックスも信じられないといった様子でグラトニーを見ている(まあ、普通そう簡単に信じられるわけがない)。
ランファンのいる部屋から出てきたエドワードたちも、輪に加わった。

「俺が頭悪いのか?兄貴が狂ってんのか?」

「リオは頭悪くなんてナイヨ」

「優しい嘘をありがとよ」

クライサとの漫才は置いておくとして。
ロイはその問いに、どちらでもない、と返した。
複数の生きた人間を犠牲にして作られるという賢者の石、それを核に作られた化物……それが人造人間だ。
更に、どうやら人造人間は軍上層部の一部と繋がりがあるらしい。

しかし、ロイの言葉を聞いていたリンが口を挟んだ。
上層部どころの話じゃない、と。

「キング・ブラッドレイ。あいつも人造人間の可能性があル!」


…………は?

ロイ、ノックス、リオ、エドワード、アルフォンス、クライサ、総勢六名によるユニゾン。
皆一様に顔を歪めて、リンを見る(当然の反応だ。この国のトップが人造人間だと言うのだから)。
しかし、リンは確かに見たのだ。

「眼帯の下……眼球に奴らのマークがあっタ!!グラトニーと一緒になって、俺たちを追い詰めタ!」

ブラッドレイの左目に、ウロボロスの印を。
そして実際、リンは彼と斬り合った。

ロイとノックス、そしてクライサは勢いよくリオに振り返った。
リオはブラッドレイに引き取られてから、数年の間大総統邸で暮らしていたのだ。
もし彼が本当に人造人間だというのなら、リオや他の家族が気付かない筈がない。









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