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車の後方に異常が無いのを確認しながら、クライサは静かに口を開く。

「……なんでリオは、あたしたちに協力してくれるの?」

人造人間や賢者の石について調べているクライサたちに手を貸すということは、危険に身を晒すのと同意。
ヒューズのように殺されてしまうかもしれない。
出来れば、必要以上に巻き込みたくはない。

「……迷惑か?」

「そういう意味じゃないよ」

人手が足りない今、こうして動いてくれることはクライサとしてもかなり助かる。
リオは信頼出来る上に、腕も立つのだ。
巻き込みたくないという意思を除けば、手を貸して欲しい人材そのままである。

「お前や坊主、兄貴がやると決めたことなら、喜んで力を貸すさ。命を賭けるっていうなら尚更な」

「……なんで?」

「そんぐらいのスリルが無きゃ、面白くない」

その言葉に、後ろを向いたままクライサは吹き出した。
そうだった。
リオはこういう人間だった。

「相手は化け物だ。常識が通用しない。いくらアンタの剣の腕が凄くても、勝てるとは限らないんだよ?」

あのロイですら重傷を負ったのだ。
リオの実力を甘く見ているつもりはないが、安い覚悟では簡単に命を落としかねない。

「常識が通用しないっつったらお前らだってそうだろ、人間兵器サン」

「そんな言い方する人は嫌いです」

「はは、悪い悪い」

けれど、否定はしない。
軍の狗よ悪魔よと罵られる自分たちが、一般人から見れば化け物に近い力を持っていることはわかっているから。
何度、人間じゃないと言われ、恐れられたことか。

「皮肉なもんだよね。『化け物じみた』あたしたちが、本物の化け物を相手にすることで、自分たちはただの人間なんだって実感する」

どんなに化け物だと言われても、クライサたちは人間なのだ。
高度な再生能力なんて身につけていないし、頭を撃ち抜かれたら彼らと違って即死。
国中の人間と何も変わらない。

「そうだ。お前は俺と何も変わらない、ただの人間だ」

「……わかった、もう止めないよ。あたしたちに力を貸して、リオ」

「お安い御用、ってな」

キッ、と短いブレーキ音を立てて車が止まった。
クライサは扉を開けて車外に出る。
彼女と同じように車を降りたリオが、目の前の古びた建物に向かって歩き出した。

中央郊外の空家。
ここに、ロイやエドワードたち、そしてグラトニーはいる。









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