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「#エロ」のBL小説を読む
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からんと音を立ててグラスの中の氷が灼熱で溶け崩れ落ちる
鉄製の汗をかいたバケツからトングで掴んだ氷は水が滴る
自身の体から落ちた水滴は海水か汗かは区別がつかない
じりじりと焼けるような日差しから逃れヤシの木の下黒く潰された影で愛しのレディの為に特製ドリンクを作りながら砂浜にさしたパラソルの下で美しく艶やかで、そして優雅な水着姿の愛しのナミさんとロビンちゃんを視界に入れる
楽しそうに会話を弾ませながら笑う二人につい手が止まりそうになる
至福だ、自然と溢れたその言葉以上に今の状況に似合う言葉は無いそう断言できる

海辺から聞こえる野郎共の声をすべてシャットアウトできればの話だが

「サンジーー!!腹減った!!!」
「うるせぇ!!船に弁当置いてあるからてめぇで取って来て勝手に食え!」

大きな声で呼ぶのは麦わら帽子を被り水鉄砲を乱射するゴム
その声に合わせる様に叫び返すとサニーへと手を伸ばし勢いよく船に戻っていく
確かにそろそろ昼時だなと完成したドリンクを二つトレーに載せた
そしてそれを片手に大量の弁当を抱えて戻ってきた麦わら帽子目掛けてサンダルを履いた足を落とした

「アホかてめぇは!一人ひとつだバカ野郎!!」

力が緩んだ瞬間に他のクルーの分を取り返すと頭を抑えたまま、あーー!!とゴムが叫んだ
それを無視して近くのチョッパーに他の野郎共分の弁当を預け配っておくよう頼む
手元に残った3つの弁当を崩さないようにくるくると回りレディの元へと向かった

「ナミすぅわぁ〜ん💕ロビンちゅわぁ〜ん💕そろそろランチの時間だよぉ〜💕」

二人のテーブルに愛情込めたレディのための弁当を置き空いたグラスを回収し先ほど作った特製レディドリンクを添えた

「ありがとうサンジくん今日のも美味しそうね」
「本当、いつもありがとうサンジ」
「二人のその笑顔がみれるだけで俺は幸せだよ〜💕」

天使の様な笑みでこちらを見た二人にラブコールを送りヤシの木の下の作業スペースへ戻る
グラスの載ったトレーを置き、手元に残った一つの弁当に目をやった

『"なかなか出てこないな…なにやってんだあいつ"』

心に浮かんだ言葉そのままが隣から、しかも思い描いていた声で再生される
驚いてバッと隣を見るといつもより多く素肌を晒し本人らしい黒と深い赤の水着の上に前を開けた見覚えのある長袖シャツの腕を捲ったスタイルに閉じられた日傘を装備した残り一つの弁当の受け取り主がこちらを見上げていた
その見透かす様な赤い目は当たった?とでも言いたげな無邪気さが見えていた
その瞳と白く美しい彼女を視界に入れることは危険だと脳が判断し視線を空いたグラスへ向け持っていた弁当を置いた

「勝手に人の考えを作り上げんな」
『あれ外れた?残念だな』

影から出てしまいそうな位置に立ち残念と言うわりに楽しそうな笑い声をあげる彼女は太陽のように笑った

「おい、日に当たるぞ」

いつもなら近くにある腕を引き寄せるのになぜか白い腕に触れることに躊躇し挙げ掛けた手を下げそう声を掛けた

『っと…危ない油断してた』

目線を下げ影を確認してそっと近寄る彼女のシガーミントの香りが先程よりも強く届いてそれを上書きするようにタールの強い自身の煙草に火をつけた

『にしてもサンジのそのTシャツはじめてみた昨日買った?』
「…人のシャツを勝手に着てるやつには教えねぇ」

黒地に細い白のストライプが入ったシャツは見覚えがあるなんてものではなく間違いなく俺の収納で毎日見かける代物
勝手に彼女が俺のシャツを着るのはバラティエの頃からよくあることで彼女が俺の服を網羅しているのはわかりきっていたことだった
黒地のシャツは彼女の水着によく似合っていて、俺が選んだとしても同じものを選んだだろう
それなのにいつも通りなはずなのに今日はやけに視線がそちらへ行き、どこか落ち着かず、見てられない
そんな気持ちを隠すように彼女へ答えを濁してみた

『いやいつものことだろ…あ、もしかしてこれお気に入りだったとかどこかのレディにもらったとかだった?』

そしてそんな気持ちに気づきもしない彼女は一人思考を巡らせどこかおかしな結論へたどり着く
一人で悪いことしたなといそいそと羽織ったシャツを脱ぎかけた彼女にぼんやりとしていた意識を戻され酷く心拍数を乱された

「ぬ、脱ぐな!別にそのシャツに思い入れがあるわけでもねぇしなまえが勝手に着てることに不満がある訳じゃねぇから、いいから、着とけ!」
『そっか、なら良かった』

咄嗟に彼女の脱ぎかけていたシャツを掴んで戻したせいで距離は縮まりシガーミントとタールの香りが濃く混ざる
指にはじんわりと汗ばんだ彼女の柔らかい白が触れている
乱された心拍数は悪化し血液の巡りが早まる
顔は直射日光が当たった様に熱を帯びる

『サンジどうかした?』

そのままぴたりと止まってしまっていた俺を心配する声が近くから聞こえるがそちらを見る勇気は出ない
なるべく自然にシャツを直す振りをして手を離し少しだけ距離を捕る
どうにかしなければと脳を回転させ落とした視線をあげ彼女を見ようとするも向かい合わせになっているせいで視線は彼女の体を辿る
爆発しそうな程の鼓動に脳はオーバーヒート
自身の今年の最高気温を記録する
もう無理だとTシャツを握り込んだ瞬間Tシャツを着せれば安心できるのではと故障した脳が結論を出す

熱暴走した思考回路は即座に行動に移し出す
灰を落とす行為をする余裕も無かった短い煙草を灰皿で潰しTシャツを脱ぎ差し出す

「こっち着とけ」
『え、なんで』

視線を合わせることなど出来ず差し出したTシャツをぼんやりと眺めながら脳を冷却し始める

「いいから、こっち着とけ」
『…まぁ、サンジがそういうなら』

明らかに渋々といった声が聞こえ手に持ったTシャツが奪われる
彼女のシャツを脱ぐ動作が始まったのが視界にちらついて咄嗟に反対を向いた

『今日のサンジおかしいよ』

その言葉と共に肩にふわりとシガーミントが乗った
突然の香りと感覚に振り替えると先ほどまで着ていたTシャツがサイズの違いで太もも辺りまで隠し七分丈となっていた
そこで肩に乗ったシガーミントが先程まで彼女の纏っていたシャツだと理解した

『やっぱそのシャツ、サンジが一番似合う』

いたずらな笑顔と大きなTシャツのせいで覗いた鎖骨が冷却された脳に自分の行動が間違っていたことを伝えた

『じゃ、お腹空いたからお弁当頂きまーす』

そう言って笑い置いていた彼女の為の他のクルーとは少しだけ込められた気持ちの違う弁当と、彼女の好みに合わせて作っておいたドリンクを取り、少し離れた岩影で品の無い食べ方をするマリモの方へ日陰だけを通って向かっていた

シガーミントに袖を通すとタールの香りが無くなって夏の爽やかさを感じた
心拍数は未だ落ち着いていない
血液の巡りはまだ速く顔の熱は冷めないまま
タールを香らせて笑う彼女がいる限りどれも正常には戻りそうにない
これは全部夏の暑さに浮かされたせいだと強く言い聞かせることですべてを終わらせシガーミントに重ねるようにタールに火をつけた
全てはのせい
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