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「#学園」のBL小説を読む
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▼全ては彼の手のひらの上

!【妄想企画
!現パロ
!ヤンデレ尾形→意味怖みたいになりました
!オチがない!!!





誰かに見られている気がする。
はじめの頃は気のせいだと自分に言い聞かせていたけど、それがいよいよ変な方向に転じたのは数日前からだった。
棚の上に並べていたはずのうさぎのぬいぐるみが、仕事から帰宅した私をベッドの脇で出迎えたのである。

「ええええこわぁ…」
「しかもそれ杉本さんに貰ったやつ」
「嘘でしょ…?」

職場の別部署である杉本さんと飲み友になって数ヶ月。連れてこられたこじんまりとした居酒屋はもう行きつけとなってしまった。
昼間は食堂をやっているらしい此処は、料理が半端なく美味しい。苦手だったはずのモツ煮込みがこんなに美味しいと知ったのは此処に通いだしてからだった。
杉本さんの言葉に否定を示すために首を横に振ると、彼は誤魔化すかのようにビールを煽った。どうやら聞かなかった事にするらしい。

「寝ぼけて置いたとか、棚から落ちたとかじゃないのか」

ハイボールを空にして、尾形さんはそう口を開いた。空になったグラスから氷を貪って漬物のようにガリガリと音を立てて噛み砕いている。
咀嚼音は汚いと思うのに、氷を砕く音は好きなのだから音というのはよく分からない。

「かなーって思ったんだけど…」

ロックで頼んだ梅酒が溶けた氷によって独特の甘みが消えた頃、私はグラスを空にするためにぐいっとそれを煽った。
尾形さんは杉本さんの知り合いだ。大学が一緒だったらしく、特別仲が良いわけでもないのになぜかつるんでいると聞いた。

「気付くと部屋の中があちこち違和感だらけなんだよね」

そう言いながら側にいたアルバイトくんに3人分の飲み物のお代わりを頼む。

「違和感って言うと?」

的を得ず濁した私に杉本さんが尋ねてきた。
先程怖がって聞かないふりをしたくせに興味はあるらしい。
飲み物が来るまでの間、私も尾形さんのように氷を口に含んでガリガリと噛み砕く。氷の冷たい感触とあっという間に形をなくしていく姿にその食感を楽しんである程度でごくりと飲み込む。

「それまで気が付かなかったんだけど、細かいものが変わってるんだよね」

例えば置いていたリモコンの位置、洗わずにシンクに置いていたはずの食器が洗われていたり、姿見の向きが変わっていたり。バタバタと慌ただしく家を出たにも関わらず帰ると玄関の靴が綺麗に並べられていたりした。
私が気が付かなかっただけで他にもあるかもしれないけど、それらは確かに私の仕業ではないのだ。

「それ、やばくない?」

運ばれてきた飲み物を受け取って、杉元さんがそう言った。
気のせいだとか偶然だとかそんな範囲を逸脱しているそれらに私の心情を代弁しているかのような声だった。

「だよねー」

幽霊でも住んでいるんだろうか、なんて霊感ゼロの私が呑気に呟けば「いや」と杉元さんは否定して尾形さんがそれに続いた。

「幽霊、だったらいいけどな」

グイッとお酒を煽る彼に、何どういう事?と首を傾げる。
私を一度横目でチラリと見て視線を戻すと尾形さんは串焼きを頬張った。冷めてしまったそれは恐らく柔らかくもなんとも無いと思うのだけど、むしゃむしゃと咀嚼する姿に焼き鳥食べたいなと気分が移る。

「人間が一番怖いって話だ」
「…え」

濁しているような言い方の癖に断言した言葉は私の背筋をひやりとさせるには十分だった。
つまり、そういうことか…?と確かめるように杉元さんに視線を投げると、杉元さんには視線を逸らされてうろうろと泳がれた。間違いない、そういうことだ。

「……怖い事を言うね」

私はその家に帰らないといけないと言うのに。
何かで読んだ、自分の家のベッド下に殺人鬼が潜んでいたという話を思い出して誤魔化すように自分のお酒を流し込む。





宴もたけなわとは程遠くあれから盛り下がった空気に誰となくお開きになってしまった会は、家の方向が逆である杉元さんとお店の前で別れる。
いつものコースならば私が住むアパートの二本手前の道で尾形さんとは別れる。が、今回はちょっと流石に怖い。

「…俺はもう眠いんだが」
「いやいや責任取ろうよそこは!」

人をビビらせるだけビビらせてはいさようならって言うのは薄情すぎる。
分かれ道で「じゃお疲れ」と帰路につこうとした彼の背広を引っ掴んで私は猛抗議した。面倒そうに振り返った顔が私の姿を見下ろすなり愉快げに笑みを浮かべたので尾形さんて実は凄く性格悪いんじゃないのだろうかと思った。
至極面倒そうに私のアパートまで来てくれるようになった尾形さんは、黙ったまま私のアパート方面の道を歩き出した。よかった、これで少しは安心だ。

「…幽霊的な方が私は嬉しいんだけど、人間だったらどうしよう」

そんな事を歩きながら呟いてみれば半歩前を歩いていた彼が怪訝に私を振り返り見る。

「幽霊ならいいのか」

その顔は理解出来ないと言いたげなものだった。
尾形さんにとっては超常現象的なものより説明がいく人間の方が良いらしい。喧嘩は相当腕が立つと聞いたことがあるので実力行使出来る方が彼にとっては自己解決出来るのだろうと思った。

「うーん、幽霊なら見えないし…やってる事も危害を加える系じゃないから…見えないメイドさんみたいな感じに思えるかな、って」

私のその言葉に「何だそれ」と呆れ気味に彼は呟いた。
実際は見える見えないの問題じゃないのだが、幽霊は場所に憑くって言うし、起こっている現象が部屋限定なのだから私ではなく部屋に憑いていると納得することができるのだ。
それがもし人間なら…と考えて私は身震いをした。

「人間なら気持ち悪い…」

呟いた私に「そうかい」と尾形さんは返してきた。理解が出来ないという様子だった。恐らくは幽霊ならやり過ごせるのに人間は気持ち悪いという部分にだろう。尾形さんとの意見は逆なのだからこればかりは仕方ない。
そうして自分のアパートに辿り着いて、私は尾形さんに部屋番号を伝える。何も言わずに何の反応もせずに彼はそのまま階段を登り始め私もそれに従う。
二択のうちの一つが当てはまってしまったなら早急に引越しをしよう、次はオートロックにしよう、出来ればモニターホンがいい。
そんな事を考えながら自分の部屋の前に立つと尾形さんが少し横に避けた。
鞄から鍵を取り出して緊張から心臓がバクバク言っているのを聴きながら私は鍵を鍵穴へ差し込む。ゆっくりと鍵を回して、そうして私はその感触に目を剥いて血の気が引いたのが分かった。

「…おい?」

私の様子がおかしいと思ったのか尾形さんが私に声をかける。ゆっくりと彼の方に視線を向けて口を開いてみれば一瞬にして喉がカラカラになっていたことに気が付いた。

「………鍵、あいてる…」

情けなくも掠れていて僅かに震えていた私のその声は笑うことも出来ないくらいに怯えに染まっていたと思うのだ。
そんな私に、見て分かるほど顔を歪めたのは尾形さんだった。眉をぐっと寄せたその顔は私を心配してのものなのか判断は出来ないけど、今まで見てきた彼の表情の中でも群を抜いて感情らしいものを押し出していた気がする。
無言で私をドアの前から下がらせて、「ここで待ってろ、いいな?」と小声で言う。こくこくと何度か頷いて見せれば彼は音を立てないようにゆっくり扉を開けて中に身を滑らせていった。
そーっと閉まるドアに一抹の不安を抱きながら祈るような気持ちで胸の前で手を組んでいた。

しばらくしてドアをガチャリと開けた彼は私の顔を見るなり「何ともない」とそう一言だけ口にした。

「なんとも、ない…?」
「ああ、誰もいねぇよ」

荒らされてもない、と付け足しながら彼は私が部屋の中に入るように促す。

「鍵をかけ忘れたんじゃないのか」

そんな事を言われながら私は自分の部屋の中に足を踏み入れた。背後でガチャンと施錠される音を聞きながらも朝の事を思い出すが、日常の一つになっている無意識のそれを思い出すことなんて私には出来なかった。
ただ、用心深い母の影響で鍵を閉めた後にドアノブを回すという癖が付いていた私は、何の違和感もなく仕事に出たことからきっとそれも行なっていたと思うのだ。

「本当だ…なんともない」

朝家を出たままの光景に心底安心をした。
じゃあ本当に鍵をかけ忘れてしまったのだろうか、なんて腑に落ちないままリビングを見渡せば後ろからついてきていた尾形さんが「だから言っただろう」と納得しきれない私を見て言う。
脱力してラグの上に座り込む私に尾形さんはコップに水を入れて差し出してくれた。

「…ありがとう」

そう言った私の声はやはりカラカラに掠れていて、ありがたくそれを受け取りつつ「というかこれ水道水じゃん」とミネラルウォーターなど常備していない我が家を思い出して愚痴る。
どこか納得できない違和感を覚えながら尾形さんをチラリと見上げてみる。すっかり酔いが醒めてしまって頭はどこか冷静だった。尾形さんもきっと同じだろう、シラフとなんら変わらなそうな顔色を見て私は少しだけ身震いをした。

「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」

意味のわからないこの違和感に冷静さを取り戻した私は後頭部をガツリと殴られたような気がして。
こちらを見下ろす尾形さんが次第に不敵な笑みを浮かべたので、私は自分の部屋にいるのにどこかに逃げたいという気持ちに駆られたのだった。




全ては彼の手のひらの上









※言い訳
【現パロ】【ヤンデレ尾形に死ぬほど愛される】
妄想ご提供ありがとうございます!そしてごめんなさいー!全然話が沿ってません!!
オチもきっちりつけていないので、意味怖系の話になってしまいました。
一応尾形イかれてます(と言いはります)4箇所くらい伏線にもならないものを散らせています、ゆっくり解答編という名の続きを書くのでお付き合いいただければ嬉しいです!
ご提供、企画参加ありがとうございました!