三つ子のお兄ちゃんといけないこと2


「まあでも棗は僕よりもすみれの身体のこと知ってるらしいから? このくらいできて当たり前なんだよね?」

「……悪かったよ」

「うん、すみれの初めて奪ったくせに気持ちよくさせてあげられない棗になんか言われたくないからね。分かったならいいよ」

 怖い。めちゃくちゃ笑顔の梓が一番怖い。棗も知っているからかもう何も言えずに黙ってしまう。沈黙で重い空気になった場には、いつもなら喧嘩しないでと諌めてくれるはずのすみれが力なく横たわっている。ここは自分がなんとかするしかない。

「もういーじゃん! こんな機会めったにないんだし、俺たち仲良くしねーとすみれまた泣いちゃいそーだし」

「まあ……そうだね」

「はい、仲直り! ってわけで続きしよ!」

「すみれまだぐったりしてるぞ」

「休ませてあげる?」

 とりあえず話を逸らし目の前のすみれへと意識を向けることに成功した。棗の言う通りぐったりとしているけれど、無意識に太ももを擦り合わせる仕草をしているから多分まだ物足りないのだろう。続けてもいいと判断して、如何にも自分が我慢できないという風に装おうと決めた。

「えー! 俺もう我慢できないんだけど」

「すみれ大丈夫?」

「……うん、だいじょうぶ」

「無理するなよ」

「うん……」

 どさくさに紛れてすみれの頭を撫でた棗は全く凝りてなどいなかった。何も知らず無邪気に微笑みかけるすみれとデレデレする棗。イラッとしたのは自分だけではないらしく、梓はあっという間にまた怖い笑顔に戻ってしまった。まずい。

「えーっと……じゃあ誰から? 俺からしてもいいの?」

「椿もう入れる気なの? 指とか舌でほぐしてあげないの?」

「あーそっか……」

「オマエこそ中学生じゃねえか」

「ちげーよバカ棗」

 棗が梓の地雷を踏み抜くから俺が犠牲になってるんだろうが、と言ってしまいたいけれど止めた。こんな時だからこそ一応兄として振る舞いたいと思う。まあ、この場を作ったのは自分なんだけれども。

「じゃあ僕が指と舌でやってもいい?」

「いーよ! 棗はどうすんの? 見てるだけ?」

「なんでだよ、キスするから椿交代しろ」

「はあー? 棗のくせに生意気」

「じゃあ椿は……それすみれに触ってもらったら?」

「それ?」

「もうかなり辛そうだけど」

 梓の視線は自分の下半身の方へ注がれていた。

「へ!?」

「どうして驚くの」

「えっ、いや、てか、梓ってすみれに手とか口でやらせてんの……?」

「僕? 僕はやらせないよ。すみれに気持ちよくなってもらうのが一番だし」

「……だよな」

「なんだ、てっきり椿はそういうの好きそうだからしてもらってるのかと思ってた」

「いやいやいやいや」

 そりゃやってもらえたら嬉しいのかもしれない。けれどいくら身体を重ねても純粋に見えるすみれに、してもらおうだなんて思えなかった。一度だってやって欲しいと頼んだこともないし、むしろすみれが知っているのかも疑問だ。

「というかすみれはそれ知ってんのか?」

「あれ、棗もさせてないんだ」

「当たり前だろ」

 棗が言ったおかげで、結局誰もすみれに口や手でしてもらっていないのが明らかになる。そうなんだ。あんまり考えたことなかったけど、他の兄弟にそれをしているすみれを想像したらとてつもなく嫌だ。

「はーーーーなんか安心した。俺のすみれが穢れてなくて」

「なんだよ穢れるって……」

「だってすみれが他の兄弟の咥えてんの想像するだけで辛いもん」

「まあ確かにな」

「だね。じゃあ椿はどうするの?」

「うーん……」

 どうしよう。胸を触ってもいいけれど、さっきの梓のテクニックを見ていたらなんだか自分がダメな気がして仕方ない。抱き締めたくても梓と棗がいるからできないし、そう悩んでいるとすみれがゆっくりと口を開いた。

「あ、の、つば兄……」

「ん、すみれどした? やっぱ疲れちゃった?」

「わ、わたし、できるよ……」

「え」

「それ……手で、触ればいいんだよね?」

「えっ」

 すみれの細い腕が伸びてきて自分の下半身を触ろうとする。ぎょっとして驚いたのは梓も棗も同じで三人とも同時に動きが固まった。

「え、いやいやいや待って!」

「……ご、ごめんなさ」

「ちが、違うんだけど、嬉しいけど、ってかすみれ、この意味知ってるの?」

「その……手と、口で……」

「オマエどこで覚えてきたんだよそれ」

「誰? かな兄? ひか兄? 他にこんなこと教えそうな兄弟いたっけ?」

「もしかして兄弟じゃないのか? 外で覚えたとか」

「えっ! まじで!?」

「ちが、違うの……わたしやったことないよ、お友達とかに聞いただけ……」

「本当に?」

 こくこく、と必死に頷くすみれは嘘をついてるようには思えない。というか、自分たちが勝手に悪い方向へと想像を膨らませただけだろう。やっと泣き方が落ち着いてきたのに、また涙目になったすみれに悪いことをしてしまった。

「いや、でもいいや。気持ちは嬉しいけどすみれにそんなことさせられねーし」

「でも……」

「いいって。てかやってもらったら梓と棗に殴られそう」

「別に殴りはしないよ……」

「でも怒るっしょ」

「うーん……いいんじゃない?」

「えっ」

「もうこんな状況じゃ何をやってもイラッとするのには変わりないよね」

「イラッとしてんじゃん……」

「さっきの棗の発言で怒りのピークは越えたかな。大丈夫」

「それ大丈夫っていうの? ねえ」

「まあ僕はすみれのここ解してあげるのに忙しいから適当にやって」

「梓やっぱ怒ってるううううう」

「そんなことないよ」

 にこっと笑った梓はもう何も言わずすみれの秘所へと顔を埋めた。触るね、と声を掛けてからまたあのなんともいえない表情で舌を使う。

「ん、ぁっ……や」

「すみれ、痛かったら言ってね」

「……う、ん」

「棗は? てかキスしねーの?」

「ああ……するけど」

「何?」

「椿はどうするんだよ」

「いーよ俺はてきとーに見てる」

「……そうかよ」

 棗は何か言いたげにしながらもさっきの自分と同じくすみれの横に寝てキスを始めた。梓が舌で舐める度に聞こえる水音と、棗とのキスでくぐもったすみれの声がとにかくエロい。小さくて華奢な妹の身体を兄である大の大人二人が貪る姿は異様としか言えないのに目が離せなかった。

「ふ、ぁっ……ん」

「すみれ、舌出せ」

「んぅ……」

「いい子だ」

「もう大丈夫かな……すみれ、指入れるね」

「ぁっ……!」

「こら舌引っ込めるなって」

「ん、や、」

「棗、ちゃんと息継ぎさせてあげなよ」

「させてる」

「させてないよ」

「オマエがいきなり指入れるからだろ」

「どこかの棗と違ってちゃんと事前に言ったよ。もうかなり解れてるから二本入りそうだしね」

 何これ、やばい。自分の鼓動が早くなっていくのが分かる。見てるだけじゃ物足りない。ただ混ざりたいという衝動が強くなっていく。
 ふとベッドに投げ出されたすみれの無防備な右手が目に入った。この手で触ってもらったらどんなに気持ち良いだろうか。一生懸命に握って、あわよくば口でもしてくれたなら……

「ぁっ……んっ、やぁ、ん、ふ」

「おい梓、すみれが」

「うん、もうそろそろかな。指二本にするからね」

「や、あぁっ……ぁっ」

「息乱れててもうキスできそうにねえな」

「頭撫でてあげなよ、耳だって首筋だって触れるでしょ」

「言われなくてもやってる」

「そう? じゃあよろしく。指ちょっと激しくするね」

「ぁ、あぁっ……あ、ずに、なつに」

「すみれ……んな顔するなよ」

「どんな顔?」

「どんな顔って……もう」

「ぁ、あぁっ……!」

 すみれの声が甘く高く部屋に響く。声に応えるように梓は指でさらに丹念に中を掻き回して、棗は髪を梳きながら額や頬に口付けた。すみれは涙を流し頬は上気して赤く、口元からはだらしなく唾液が伝っている。そして身体が微かに震え始め、また快感へと上り詰めていく。
 そんな三人の様子は今まで抑えていた箍が外れるには十分だったのかもしれない。いつの間にか自分は無意識に、ベッドシーツを必死に握る小さな右手を握っていた。