You're my precious one -Natsume-


 ピンポン、とチャイムの音が鳴る。今日は久々の休みで彼女がそろそろ家に来る予定だった。合鍵で入っていいと言っておいたのにもかかわらず、チャイムが鳴らされたことを不思議に思いながらドアを開ける。

「なつ兄、きたよー」

 ドアを開けるともちろん愛おしい妹が立っていた。服装はブラウスにロングスカート。スカートには見覚えがあって、以前あんまりにも丈の短いスカートを履いて来たものだから耐えられず強引に買い与えたものだった。それをわざわざ着てきてくれたことに頬が緩む。

「なんだよ、合鍵あるだろ」

「なつ兄に開けてもらいたかったの」

 拗ねた子供みたいに頬を膨らましたと思ったら、すぐに機嫌を取り戻して笑う。久しぶりの会えた妹のころころ変わる表情に目が離せない。部屋に入るとつばきとあずさも喜んだように彼女の足元に擦り寄った。

「よしよし、なつ兄に意地悪されてない?」

「オマエな……」

 そのまましゃがみこんでつばきとあずさと戯れ始めた彼女の、頭を撫でながら身体を引き寄せる。首筋に顔を埋めていっぱいに息を吸い込むと甘い香りが鼻をくすぐった。

「なつに、うごけない……」

「動く必要ないだろ」

 つばきとあずさに触れない、とじたばたする身体を逃がさないようにと抱き締めてキスをする。すると今まで暴れていたのがぱたりと大人しくなった。顔を覗き込めば頬を赤く染めながらも、嬉しそうに微笑む彼女がいた。

「そんな顔するなよ……」

「……?」

 我慢できなくなるだろ、心の中で呟いてもう一度唇を落とす。部屋に響くリップ音と甘い吐息。ブラウスに手をかけるとそこへ小さな温もりが重なった。拒否というよりもやんわりと止めるような手。ああ、せめてベッドにしろってことか。我慢できず床で抱く度に反省するのに繰り返してしまう。

 身体を軽々と持ち上げてベッドに運んだ。その拍子にめくれたスカートから、ちらりと見えた白い足にごくりと生唾を飲み込む。今すぐにでもめちゃくちゃにしたい衝動を押さえ込んで、不安そうに顔を伺う彼女に囁いた。

「今日は優しくする」

 ゆっくりと頷いた彼女の髪を優しく梳いてキスを落とす。さっきよりもずっと深く。溶けるくらいに。そして世界が彼女だけになってゆく。

 にゃー、と抗議するようなつばきとあずさの声が、遠くで聞こえた気がした。