「二週間くらいかな……」
「……長かった」
はあ、と大きな溜息が耳元で聞こえた。なつ兄とわたしが会えないことはそれほど珍しくはない。離れて暮らしているし、なつ兄が仕事で忙しいときは一ヶ月会えないなんてざらにある。
「な、つに……カレーが」
ふつふつと温まってきたカレーを目の前にわたしは何もできなかった。身体を離してくれないのもそうだけれど、そこにキスも加わったからだ。髪に、耳に、頬に、首筋に。くすぐったくて身を捩っても止まることがなく、むしろ激しくなってゆく。耳を甘噛みされ首筋に舌を這わされて、身体に力が入らなくなるのはすぐだった。
「火、あぶない……よ、」
「ん」
なつ兄はわたしの身体を支えながら手を伸ばしてガスの火を止めた。そして腕を解き身体を向かい合わせにさせられ、腰をシンクに寄りかからせた状態で今度は唇にキスが落ちてくる。軽く触れて啄むのを何回か繰り返したあと、舌を絡めとられ息継ぎさえままならない。
「んっ、ふ……」
首を振って抵抗しても逃げられなかった。苦しくて涙が出そうなほどなのに、それが心地いいとさえ感じる自分もいた。なつ兄の腕に縋りついて、苦しいときは胸を叩き、少しだけ与えられる息継ぎの瞬間に必死に息を吸い込む。その浅い呼吸でさえ奪うようになつ兄は唇を塞いできて、やがて酸欠の頭が朦朧としてくる。キスからやっと解放されたときには、わたしはもう立っていられないほどだった。
「なつ、に……ここじゃ、や、だ……」
「分かってる」
へなへなと座り込んだわたしは軽々と抱き上げられベッドへと運ばれた。横たえた身体になつ兄は覆い被さってきて耳元でわたしの名前を囁く。
「すみれ」
「なつに……」
「先に謝っておくよ」
何を、なんて聞かなくても分かってしまう。わたしは頷くしか選択肢がないことも。心の中で仕方ないな、なんて呟けばなつ兄はまるで聞いていたみたいに苦笑して答えを口にしてくれた。
「久々に、めちゃくちゃに抱かせてくれ」
END