ゆたんぽ




「は、ハックション!」


鼻をすすりながら寒さにぶるり、と身震いをする。風邪をひいているわけではない。ただ単に、この部屋が寒いのだ。




黒の部屋にはちゃんとした暖房器具がない。
けれど、黒は平気らしく私が我慢すれば済む話となってしまった。





「まおー、」


腕を広げて、丸くなっている猫を呼ぶ。
猫はこれから何をされるのか想像がついているらしく、しぶしぶ寄ってきた。

寄って来た猫を抱きしめる。温かくて、さらさらの毛が気持ち良い。


「うーん、温かい。」


もう離したくない、と頬ずりをしていると突然わたしの腕の中から、猫が取り上げられた。

見上げると、黒が猫の首根っこを掴んでいる。


「黒…?」
「黒!離せ!」


猫が暴れると、猫は簡単に手が放されて着地した。
それから黒は何事もなかったように、また腰を下ろした。


…なにがしたかったのかよくわからないけど、そんなのはいつもの事だ。

ぶるり。猫がいなくなってまた、腕の中が冷えてしまった。




「ま……お!?」


もう一度猫を呼ぼうとした途端、 黒に後ろから引き寄せられた。抵抗する間もなく黒の両腕にすっぽりと収まる。

「猫より、良いだろ?」
「うーん。でも猫柔らかくて抱き心地良いんだよね。」
「…………」
「さらさらと毛とか気持ち良いよ。温かいから、黒も今度…うっ!?へ、黒さん?」


黒の冷たい手が、上着の隙間から入り来んでお腹をを撫でた。


「そんなに寒いなら、」


そう耳元言って、黒が私の首筋を舐めた。


「っ!!猫!!」
「俺には無理だ。じゃあな。」
「裏切り者!猫ー!」


頑張れ、と言って猫は窓から出て行ってしまった。
…こうなったら。自力でどうにかするしかない。


「!?」


腕から逃れようと暴れた途端、黒に触れられている部分がピリリとした痛みが走った。
……これ以上の抵抗は命が危ないと悟る。


「すぐ寒くなくなる」


そう言って、笑う黒が目の隅に見えた。




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