酔っぱらうリョーマ




「つぐみせんぱ〜い」


リョーマが舌足らずな呼び方で、きゃっきゃと楽しそうに後ろから抱きついてきた。

いつもの生意気でクールなリョーマはどこにいった。



数時間前、腹が減ったと言うリョーマに頂き物の洋酒入りのチョコをあげた。不味いっすね、と言いながらもお腹が減っていたらしいリョーマは一箱食べきり、それから暫くして、顔を赤くして暑い暑いと着ていたTシャツを脱ぎ捨ててしまった。
少しずつへろへろになっていくリョーマを横目に、まさかこんな漫画みたいなアホな展開になろうとは想像できなかった。

酔っ払った時が、その人の素であるとか前にテレビでやっているのを思い出した。これがリョーマの素なのか、と考えて違うかと一人で笑った。



「つぐみせんぱ〜い」
「ちょ、やめて!」


乱暴に頬ずりをして、頬に好きなだけキスをしてきて、人の耳で遊んだりとやりたい放題だった。
読んでいた本が、手から奪われて投げられる。その本を拾おうと手を伸ばすとだーめ、と無駄に色っぽく耳元で囁いて手を握るもんだから私はギャーと叫んでいた。

引き剥がそうと暴れて頑張ると、抱きつく力を強められるだけで逆効果だった。


「つぐみせんぱい、好きれすよ〜」
「はいはい」
「つぐみせんぱいは〜?」
「はいはい、好き好き」


そんなに俺のこと好きなんすか、とリョーマは笑いながら今度は優しく頬ずりをした。リョーマの声にさっきよりもトーンが幾分下がっていて、眠くなったようだった。

これはチャンスだ、ともう寝なさい、とリョーマ を叩くと、わたしの肩に顎を置いていたリョーマがピクリと動いた。


「寝る?」
「そう!もう寝よう?」


は〜いと、間の伸びた返事が耳元で聞こえて抱きついていたリョーマの腕の力が抜けていくのを感じた。やっと酔っ払いから解放される…と安堵のため息がこぼれたのもすぐに、

「でっ!?」

急な出来事に対象しきれず、ゴツンとフローリングな頭を打ち付けた。
目の前には、私の上に跨がるリョーマの姿。

先ほどのへらへら力なく笑うリョーマはいなくて、なんか目がギラギラしているんですけど?


「リョーマ、さん…?」


目が離せなくて、動けないでいるとニヒルに笑いながら近づいてくるリョーマの顔があって。ああ、やばい、ここは先輩としての威厳をみせないと、明日リョーマは部活あるんだっけ?とかぐるぐる考えた結果


「せい!!」
「ぶ、」


思いっきりパンチしてみました。 頬にクリーンヒットしたらしいリョーマは、そのまま朝まで起きることはなかった。












「あ、リョーマ、お、おはよう…」
「昨日の記憶ないんだけど」
「そっか、疲れてた、からね?」
「顔痛いんだけどなんで?」
「し、知らない…」




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