餃子の神様どうか (今晩はギョーザにしよう。) 窓の外を眺めていると、ふわふわと流れる曇がギョーザに見えた。おいしそうなでっかいギョーザ。 明日は土曜日だから、にんにくたっぷりで作っちゃおう。そんな事を考えながらウキウキして買い物リストをノートの角に書いていく。 「…餃子はやめなよ」 隣の周助がボソッと口を開いた。彼の独り言かと思ったが、彼の視線は私を向いている。あれ?ギョーザのギョの字も口に出してなくない?そもそも授業中にギョーザのこと話しかけてくる? 「わかるよ、つぐみの考えていることくらい。」 ほら、また。 「しかもにんにくたっぷりなんて」 ああ、やっぱり。と確信した瞬間全身鳥肌がたつ。ちょっと、こいつなんとかしてよ。 前の席の英二のイスをドスドス蹴って助けを求めると、英二は机に突っ伏して動かなくなった。 寝たふりしやがった…薄情者! 「…関係ないでしょ」 「口が臭くなるよ?」 「私はそれでもいいの」 「僕が嫌だよ。にんにく臭いつぐみとキスしたくない」 「しなくて良い。ていうか、するな」 授業中になんという事を言うんだコイツ。 先生どうして何事もないように授業を進めるんですか?授業についていけてない生徒がここにいますよ。 まだノート書けていません…そこはまだ、あ、消さな…いで…あ、畜生。 「あ、僕も餃子食べれば良いか。じゃあ今日は泊まりに行くね」 「先生ー!隣の不二君がうるさいです!」 「手塚に頼んで7時には終わらせるよ。ふふ、一緒に餃子包もうね。」 「先生エ…」 にんにくたっぷりなんて、今夜僕をどうしちゃいたいのかなつぐみは、そう言ってクスクスと楽しそうに笑うので私はただただ祈った。 (どうか、生焼けの餃子で死ぬほど腹を壊しますように。) ← |