赤也の誕生日




「おぉう…?!」

突然、身体がぶるると震えた。

この突然の寒気…嫌な予感がする…まるで魔王に狙われているような気分だ。多分気のせいだけど、絶対気のせいだけど、今日は急いで帰ろうっと。

ホームルームが終わり、何かに急かされるように玄関へ向かった。
靴を履き替えようとする爪先が落ち着かなくて靴があちこちにいってしまう。ああ、もう、なんで、と思っていたらぽんと肩を叩かれた。ぶわあと全身鳥肌がたつ。


「まさか、帰るつもりじゃないよね?」
「ゆ、幸村さん…」

ギギギと後ろを振り替えると、無駄にいい笑顔をした幸村さんがいた。

「なにか御用でしょうか…?」
「今日はあの日だよ?忘れちゃった?相変わらず、頭が弱いんだね。フフ」

あの日って?さっぱりでてこない。彼とは3年間同じクラスだっただけの、ただそれだけである。あの日だよ。ああ、あの日ねと言って通じ合う仲ではなかったはず。


ごちゃごちゃ考えてる私に、じゃあ行こうかと、引きずられるように連れてこられた先は、テニス部の部室だった。

あれ、前にもこんなことがあったような。デジャブ?

無言の圧力に負けて、仕方なしに部室に入ると、個性豊かなテニス部メンバーが揃っていた。ケッ、今日も無駄に眩しいやつらめ。

部室の中は手作り感漂う装飾がされていて、ますます私の頭の中はまったくついていけなかった。

「まだわからないの?赤也の誕生日だよ、」


ああ、そういえば去年も





「刹那さんケーキ食べたくない?」「…まぁ、どちらかというと食べたいかな」「だよね。じゃあ行こうか」「え?話が読めないよ。幸村くん?」「うん。良いから。」

そう言って、連れて来られた先はテニス部の部室だった。中に入ると、柳くんが私の顔を観るなり「ほう…」と呟いて、他のみんなもなるほどみたいな顔をしていた。部室は今日みたいにちょっとだけ飾り付けがあってブン太くんの手作りらしいケーキが真ん中にあった。ケーキの真ん中のチョコにはたんじょうびおめでとうあかやとち歪な字で書かれている。

「あかや?」「僕たちの可愛い後輩だよ」

あまりにも可愛いから君にも紹介したくてね、刹那さんが一緒にお祝いしたら彼も喜ぶからと幸村が言っていた。え?なんで?会ったことないよに?と聞くとさあ、もう来るよとクラッカーを無理矢理持たされた。

ドアが開き、隙間から顔を覗かせた黒いもじゃもじゃ。

その子が顔を除かせた瞬間誕生日おめでとうと、部室内に響く。その子が、あかやくんのようだった。


「え!?刹那センパイ?ホンモノ?え?まじで?」「本物です。はじめまして。赤也くん誕生日おめでとう」

入り込めない雰囲気に少し後悔しはじめていたら、私の顔を見て赤也くんが唖然としてた。ここにいるのはやはり場違いだったと後悔もつかの間、彼はきらきらした目をしてまじ嬉しいっす!と私の手を握り握手をした。当時の赤也は、まだ背も小さくて髪も短かったと思う。




「君は赤也の誕生日にかかせないよ」
「どうして?」
「だってプレ……っデターだからね。そう、プレデター」
「プレデターって宇宙人だよね。しかもすごい気持ち悪いやつ」
「フフ。そうそれ。君はそれだよ。テニス部の侵略者」
「あーうん。帰りますね」
「まあ、とりあえず…」


幸村君がじゃあお願い、と言うとどこからともなく部室に入ってきた彼女たちはわたしを上から下まで見て、笑みを浮かべた。

「えっ?なに?!ひいいっ!ちょっ、」
「あばれないで」

多分演劇部の人たちにどこから出てきたのか可愛らしいワンピースを着せられ、ヘアメイクされ、あれよあれよ、と彼女らの勢いにされるがままとなってしまった。



「はぁ…一瞬ですごく疲れた…」
「うん。マシになったね」
「何コレ」
「もうすぐ赤也が来るぞ」


柳くんがそう言うと、みんながケーキを囲んで扉の方を向いた。柳生君がさりげなくわたしにクラッカーを持たせてくれる。ブン太くんやジャッカルくんはクラッカーを持って、今にも紐を引く準備をしている。


「刹那、スカート引っ張らない」
「刹那、髪を触るな」


幸村、柳くんにまで注意され仕舞いには一番前に押し出されてしまった。
ガチャリ、とドアノブがひねられ扉が開く。ドアのすき間から、もじゃもじゃ頭が覗かせる。あ、去年と一緒の光景。


「「赤也誕生日おめでとう!!!」」

パンッパンッとクラッカーが鳴り、みんなが声を揃えて叫ぶ。

「へへ、あざーす!」

扉から顔を覗かせる赤也は少し照れたような、嬉しそうな笑みを浮かべた。


「誕生日だから今日は刹那を好きにしていいよ」
「おい、幸村。さすがにそれは君が言うのはどうかと思う」
「そうじゃ赤也。ナニしても良いぜよ」
「仁王くん?君が言うと変な風に聞こえるからやめて」
「先輩たち何言ってんすか!ねえ、センパイ?」
「赤也、顔がにやけてる」
「今日は基礎練で部活終わりだから。刹那もこれから暇で暇で仕方ないらしいからデートでもしてやってよ」
「赤也せっかくの誕生日それでいいの?!」
「先輩とデート最高のプレゼントっす!デヘ」
「主役がそれでいいなら…7時までね。」
「はい!!あ、先輩達は盗み見禁止っすから!!」
「「(まあ当然、尾行しますよね)」」


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