あの日。

 俺が《ユウちゃん》と別れたあの日。


 秋晴れの空の下、心地いい風が柔らかく吹き抜ける公園に、彼女を呼び出したのは俺だった。

 電話で呼び出した声もそうだったけど、彼女は既に俺の変化には気づいていたのか、なんとなく機嫌が悪い様子を感じさせた。

 だけど実際は、機嫌が悪かったというより、不安が声に映っていたって感じが正しいかもしれない。



 《ユウちゃん》は、見た目こそ派手だけど、内面は優しくて思いやりのある温かい子だった。だから好きになった。

 俺の心変わりに気づいても、俺を責めたりしてこなかったけど。別れを告げた時は、酷く悲しい顔をされたな…。



 悲しい顔をしながら

 「わかってた…」

 そう呟いた声が、涙声だったのが…いまだに耳から離れない。



 忘れられない…っていうのとは違う。

 これは罪悪感だから。



 別れの直後に、明るい素振りで手を振って、気丈な態度で背を向けた彼女に…悪いことをしたと、今でも思っているからだ。



 別れたキッカケは…夏樹が振られたから。

 俺達の別れ話の2日前だったか…。

 俺の家の前で、別れの理由も分からず泣いていた夏樹を見たから。


 これで、夏樹と会う理由が無くなってしまうと思った。

 放っておけないと思った。

 とにかく、そう思ってしまった。

 そう思ったら、あのままじゃ居られないと…ハッキリしなきゃ、自分の相手に失礼だと思ったんだ。


 だから夏樹のせいじゃない。

 俺のせいだ。


 ただ、今考えているのは…






 あの時の、泣きじゃくっていた夏樹を…その涙を拭うことすら出来ず、隣で見ていただけだった俺…。










 あの時触れていたら…


 今は違っていたのかな…。




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