夏樹
「ヤスが恋愛に消極的なのは、《ユウちゃん》の事が忘れられないからなんでしょう?」

ヤス
「…」


 まるで責めるように俺の目をジッと見つめて、的外れなことを言っている。


ヤス
「…そんなじゃないから」


 なんとか平常心を逃がさないように、返事を返すんだけど…


夏樹
「わたし達、友達でしょ?悩んでたり、苦しかったりするのなら言ってほしいよ…」



(聞こえてないのか?)



ヤス
「…いや…俺は別に」

夏樹
「協力するから……ね?」

ヤス
「………」



 じわりじわりと、真剣な眼差しをたたえながら迫ってくるその距離に、空気を読まない心臓が鼓動を速めるのがなんとも悲しい。



(頼むから話を聞いてくれよ。もはや言葉が見つからないけど…)



 ここで…想いのたけを吐き出してしまったら、どうなるだろう?

 夏樹が観たいと言った映画。

 ほとんど観ていないどころか全く関係ない話題で時間を潰し、もう終盤にさしかかっている。


(友達…か)


 俺は男として見られていないらしい。


(こんだけ長く友達関係続けてたら無理もないか…)



 こうやって、諦めと後悔を繰り返しながら、俺は夏樹のそばに居る。

 隣に居さえすれば、いつかは伝わるとでも思っていたのか俺は…。



(情けないな…)





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