☆side→ヤス



 薄暗い男部屋。

 2人、ベッドにもたれ…ありふれた恋愛映画を観ている…。



 とにかく今俺たちは…薄暗い部屋に2人きりなんだ。

 とにかく俺は、胸の高鳴りを消し去れなくて困っている。

 映画を観なきゃ、後で感想を聞かれた時に困るっていうのに。目線どころか顔ごと隣に意識を奪われている。



 薄明かりの中で輝く黒髪。そこから覗く、白く透き通る首筋。

 普通に考えて、今の状況は危うい…。


 わかってるか?この状況…。


(俺は…………)




夏樹
「…ねぇ、ヤス?」

ヤス
「!!」



 突然、夏樹が話しかけてきたので、俺は慌てて目線を画面に戻す。

 「なに?」と、平静を装いながら返事をすると、夏樹の顔がゆっくりと此方に向く気配がした。



ヤス
「…」

夏樹
「…」



 夏樹は、俺を見ている。

 俺はテレビ画面を真剣に観ているフリをして、その視線から逃げている。




 少しの沈黙の後。映画の中から聞こえる愛の囁きを遮るようにして。小さな溜め息を交えながら、夏樹が口を開いた。


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