☆side→司 司 「すんませーん。カフェオレおかわりー」 先ほどまでヤスと話していたカフェのオープンテラス。客の数は相変わらず。 店員からもらったティッシュを鼻に詰めた間抜けな顔で、何杯目かもわからないカフェオレを再度オーダーして後悔した。 そうなんだ。腹も減ってきたんだ。 どうせなら何か食えるものを頼めば良かった。というか、カフェオレなんか何杯も飲むもんじゃねえ。 口の中が甘ったるくて気持ち悪い。 先ほど俺がヤスに耳打ちした言葉。それはいったい何だったのか。 今の俺の顔を見りゃ一目瞭然だろう。 まったく予想を遥かに上回るリアクションをしてくれたおかげで、作戦はなんとも順調にいきそうな予感がする。素晴らしい。 そうなのだ。 先ほどの俺の耳打ちに対してヤスは。 ヤスという優男は。 なんと拳で応えてくれたのだ。 こんな事を言うと変態扱いされそうだが、俺は嬉しい。 殴ってくれたことが嬉しい。 とにかく俺を殴るなんてアイツもなかなかいい男じゃん? きっと今まで誰かを殴ったことなんか無かっただろうにな。なんたって力加減とか無かったもんな。 俺の鼻よりも、ヤスの拳が割れてんじゃねーかという心配の方が大きいくらいだ。まったく面白い。 一人ニヤニヤしながら甘いカフェオレを啜り、先ほどの親友の怒り顔を思い出しては笑いを堪えるのに必死だ。 最早、周りの客がコチラを見ていようとそんなことはどうでもいい。とにかく可笑しいやら嬉しいやら楽しみやらで、俺の顔面は緩みっぱなしだ。 さてここからは結果を待つのみだが、とりあえず腹が減った。何か頼もう。 腹ごしらえしてる間に次の相手がやってくるだろうからな。 司 「店員さーん。注文とってー」 間抜けな顔を隠しもせず、再び店員を呼びつける。 司 「・・・ふっ」 油断すると笑いが込み上げるんだが、どうすればいい? 怪しげな物でも見るように、警戒しつつオーダーをとる店員を横目に、次の待ち合わせ相手が現れるだろう方向を見遣りながら、とりあえず軽めにパスタでも頼もうか。 あー・・・早く結果が出ないかな。 prev/next ←目次 ←home |