☆side→夏樹



 さっきはビックリした・・・。

 またヤスの前で過呼吸起こしちゃって、ヤスも約束あったのに遅刻させちゃった。


夏樹
「・・・ほんと、もー」


 自分が嫌いだ。こういう事がある度に嫌いになっていく。

 いったいどうすれば失敗を繰り返さずに普通に生きられるのか。これは常々考えていることだけれど、何時までたっても改善されない現実は、自分がどうしようも無い人間だといちいち証明されているようで、考える度に気持ちが落ちる。

 待ち合わせ場所の公園に向かう重い足を引きずるように動かしながら、つい先ほどの出来事に後悔を募らせている。情けなくて涙が出そうだ。

 時々地面に躓きながら、なんとか転ぶことなく公園の入り口に差し掛かると、見覚えのある後姿がブランコを揺らしていた。


夏樹
「・・・・・あっ」

ユウ
「!!」


 懐かしくもあるその後ろ姿に見とれて、ついに転んでしまった。

 ブランコの鎖が軋む音が響いて、足音が近づき、耳に響いた綺麗な声にドキリと心臓が跳ねた。


ユウ
「大丈夫?」

夏樹
「あ・・・ゆ、ユウちゃん、うん、大丈夫」


 差し出された綺麗な手。そっと触れると、少し冷たい。

 グイッと引き上げられ、立ち上がると、目の前には以前よりも更に綺麗になった彼女が照れくさそうに立っていた。


ユウ
「久しぶりに会ったと思ったらいきなりコケるとか、ホント変わってないね」

夏樹
「あ、あは・・・」


 会えて嬉しい。呼び出してくれて嬉しい。また話せるなんて嬉しい。

 少し微笑んだように見えた彼女に、わたしも精一杯の笑顔を向けようと顔を見遣ると、一瞬微笑みかけた彼女がそっぽを向いた。


夏樹
「?」

ユウ
「げ、元気だった?」

夏樹
「・・・うん。ユウちゃんは?」

ユウ
「まあ、相変わらず?」

夏樹
「・・・前も綺麗だったけど、もっと美人さんになってるから、なんか緊張する、かも」

ユウ
「・・・」

夏樹
「・・・」


 どうしよう、会話、途切れちゃった。


ユウ
「・・・」

夏樹
「・・・」

ユウ
「っつーかさ」

夏樹
「へ?」

ユウ
「ウチら別に友達じゃないし、そんな気ぃ遣わなくていいよ」

夏樹
「・・・」

ユウ
「用があったから来てもらっただけだし」

夏樹
「・・・う、うん。そうだったね」

ユウ
「・・・」


 胸が痛い。

 こうなる以前の事を考えれば当たり前の今だけれど、ユウちゃんに対するわたしの気持ちは、あの頃と少しも変わっていないのだから。




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