今話した内容が余程恥ずかしかったのか、未だにヤスの顔は赤い。

 ここまで初心なのも凄いな。尊敬するわ。


 それにしても、あれから何年も経ってるのに、まだ何も無いなんて不思議だ。コイツもしかして不能なんじゃねーのか?とか疑わしくなる。


 確か、俺と付き合ってた頃から、夏樹はコイツの家に入り浸ってた筈だ。

 とある夜に、ヤスの家から二人が出てきたのをタメの奴らが目撃して噂になったくらいだからな。俺の耳にも当然入ってた話だし。

 相手はこのヤスだから、それで夏樹を問い詰めるようなことは無かったけど。噂に尾ひれが付いて、それはもう酷い話に仕立てあがってた。

 それが原因で、俺達それぞれの男女関係が壊れたと思ってる奴も少なからず居たんだ。

 実際、蓋を開ければ小学生みたいな付き合いしかしてないなんて、いったい誰が思うだろう。

 いや。今どき小学生のほうが進んでるかもしれねー。これはマズイぞ。



「もうさぁ」

ヤス
「?」


「ヤッちゃえよマジで」

ヤス
「!!」


「お前のその紳士的?っつーの?その態度もスゲー良いとは思うよ?けど、いつまでこのままのつもりしてんだって話じゃん」

ヤス
「だっ、だからってそんなっ」


 最早、首まで真っ赤に染まった姿で狼狽えている親友。

 恥ずかしさからか無意識に大きくなったヤスの声で、周りの客が此方を見てざわついている。

 俺は一応、声のボリュームには気をつかってたんだが、おかげで台無しだな。


 とにかく忘れちゃなんねーのは、夏樹が俺の元カノだってことだ。

 当然ヤルこたヤッてるし、たぶんそこらの女より進んでた筈だ。

 幾らなんでもあれだけ一緒に居て、夏樹もヤスも何も意識しないわけがねえんだよ。



「だからぁ、夏樹だってな?」

ヤス
「夏樹の気持ち考えろよ!お前酷いよ!」


「・・・」


 あ、キレた。

 あーあ。周りの客が注目しちゃったよ。


ヤス
「毎回毎回、俺が何でも黙って聞いてると思ったら大間違いだぞ!人間には言っていいことと悪いことがあるんだからな!」


「・・・」

ヤス
「いくらなんでも今のは許せない!お前が本気でそこまで適当な人間なら、俺はもう一緒になんか居れないよ!」


「・・・あのなぁ」

ヤス
「うるさい!よくもあんな事言えたな!お前はあの時、自分勝手に終わらせただけかもしれないけど、そのせいでアイツがどれだけ傷ついてたかわかんないのかよ!」


「わかってるよ」

ヤス
「ほら!だからっ・・・・・?」


「わかってるよ。んな事」

ヤス
「・・・」


「アイツがどんな気持ちだったかなんてわかってるよ。わかってるから、俺から終わらせたんじゃん」

ヤス
「・・・」


 論点がズレてんだよな。

 コイツが言いたい事はわかるよ。でもそれは、俺の中ではもう解決してるし、たぶん夏樹も同じだ。



「お前こそ、アイツが何で泣いてたのかわかってねーだろ」

ヤス
「・・・な」


「お前も大概ニブイよな」

ヤス
「・・・」


 これだから他人優先の奴は困る。

 少しは自分の置かれた状況に気づけ。





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